日本の家電メーカーの将来

2月27日の Yomiuri Online に次のような記事が出ている。

液晶 ソニー・シャープ共同生産…各社の戦略に差

 ソニーとシャープは26日、液晶テレビ用パネルを共同で生産する合弁会社を2009年4月に設立すると発表した。

 シャープが大阪府堺市に建設中の液晶パネル工場を分社化し、シャープが66%、ソニーが34%を出資する。薄型テレビは需要が急拡大しており、テレビ用のパネルをどう調達するか、電機各社の戦略の違いが鮮明になってきた。

この記事では、液晶を使った薄型テレビについて次のような分析を載せている。

  1. 現在、液晶テレビは需要が急拡大しており、液晶テレビを販売する家電各社は大きな利益を得ている。
  2. 急拡大する需要に応えるには、基幹部品である液晶パネルの安定調達が不可欠。
  3. 液晶パネルを自社生産する利点は、独自技術を付加して差別化が図りやすいこと。
  4. 自社生産のデメリットは、巨額な設備投資が必要なため、価格の暴落等、市場の急変に弱いということ。
  5. このメリット・デメリットを見極めて、家電各社は戦略を立てている。
  6. シャープと松下電器は自社生産。
  7. ソニーは、シャープとの合弁(それがこの記事の内容)
  8. 東芝日立製作所、パイオニアは、市場シェアが劣るため、自社生産する体力がない。それゆえ外部調達。

ざっと要約するとこんな内容だ。

日本を代表する家電各社は、薄型テレビに社運をかける勢いである。実際、家電メーカーにとって薄型テレビは、稼ぎ頭らしい。(たとえば『松下、最高益1151億円…07年10〜12月期 薄型TV、「白物」好調』参照)

技術的に「液晶パネル」がどういうコスト構造を持っているのかわからない。(技術的にはWikipedia 液晶ディスプレイ参照)ただ、巨額な投資と比較的な安価な原材料と確立した生産方法による低い限界費用という組み合わせは、DRAM をはじめとする半導体のコスト構造をほうふつさせる。ということは、近い将来、血みどろの価格競争に突入するということではないのか。日本の家電メーカーはいつまでこんな体力勝負を続けるのだろうな。

その一方で(現物を見てないからわからないけど)「機能やボタンが多すぎ!! 使いにくいUIのデジタル家電が発売されてしまう本当の理由」のように、ユーザーインターフェイスはむしろ退化の道をたどっているらしい。自分たちの「技術力」に頼みすぎて、もっとも重要なユーザー体験が置き去りにされているのかもしれない。

いまは一般消費者を直接相手にして商売をしている家電メーカーも、ユーザーを置き去りにして、ひたすら技術的な突出を続けるとしたら、エンドユーザーのニーズをつかむのがもっとうまい最終組み立てメーカー相手の部品メーカーとなってしまうかもしれない。現在すでに見られるような AppleiPod とその部品供給メーカーとしての日本企業という姿は、将来の日本の製造業の形を示唆しているのかもしれない。

ただ、普通はエンドユーザー相手の商売がいちばん利益率が高いはずである。それができなくなるとなると・・・。日本のメーカーは苦労の割りに見返りの少ない「レッドオーシャン」をひた走っているという「血の海」を泳ぐ日本 という記事もある。まあいいや。人が何をして儲けようと、その人の勝手ではないか。がんばって儲けてね、日本の家電メーカー様。