日本病

自分の中の日本への危機感をぴったり言い表している言葉を見つけました。「日本病」です。かつて経済大国の地位から転落したイギリスを指して「英国病」と呼びました。そっくりですね、いまの日本の状況は。

日本病というキーワードで Google 検索をかけると、現在のところ2万件ほどヒットします。この数はこれから年々増えていくでしょうね。

日本病を考える」によれば、日本病は次のような症状を持つそうです。

第一に、日本病の感染者は、自分が日本病の病に罹っていても、容易にそれと気づかないという傾向が強いこと。(感染意識の欠如)

第二に、日本病の感染者は、全てにおいて受動的な心的傾向を伴うこと。
(積極的行動の欠如)

第三に、日本病の感染者は、極端に自分が突出を恐れ、出る杭は打たれるという教訓を心に刻んでいること。(顕著な中産階級意識)

第四に、日本病感染者は、封建時代の権化とも言うべき、徳川家康の信奉者が多いこと。(見ざる・言わざる・聞かざるの思想)

第五に、日本病感染者は、恥という日本文化の根底にある心的傾向を務めて無視するか、完全に忘れ去っていること。(恥の文化の喪失)

第六に、日本病感染者は、政治とは世襲的な労働であり、選挙において、自分が誰に投票しようと無意味であると諦念の気持を持っていること。(政治的諦念)

第七に、日本病感染者は、依然としてアジア諸国に対する優越意識を持ちながら、アメリカを始めとする欧米先進国に対しては、卑屈な劣等意識を引きずっていること。(プチ?脱亜入欧意識)

第八に、日本病感染者は、日本の欠点ばかりを探して、長所を見ようとしないネガティブな心的傾向を強く持つこと。(ネガティブな傾向)

第九に、日本病感染者は、自分がリスクを負って先頭に立つことを極力避ける傾向があること。(冒険精神の欠如)

...後略

1, 2, 7 あたり、グッときますね。2000年ころのエントリらしいです。それから8年。残念ながら状況はあまり変わっていないようです。

PDF なのが少し残念ですが、この文章は面白いです。タイの現地企業で働かれている方が日本の金型部品メーカーからの視察団を受け入れたときの話のようです。

先日、超有名な金型部品メーカーの人がいらっしゃいました。
タイでの市場調査と今後準備だそうです。「納期が遅い」だの「価格が高い」だのとお決まりの世間話と同様の価値しかない文句を言いながら「日本語会話」を楽しみました。日本人が来ないと、会社では、日本語を話す機会など全く無いので、お客様であれ、業者であれ日本人が来ると無駄におしゃべりをしてしまいます。せっかく日本から「調査」に来ていながら、日本で考えてきた「あらすじ」通り答えを出そうとしているように思えました。


日本が一番 病
何でも日本が一番。日本の技術、日本の品質、日本の納期等々、日本の要求する条件を満たしていれば絶対に問題ないと信じている。
...

高品質大丈夫 病
日本の製品は高品質である。値段が少々高くても、品質がよければ売れると信じている。
...

日本人がいると安心 病
ローカルに企業にいると、日本から来た人や日系企業の担当者から「一人でも日本人がいれば安心です」と言われる事が多い。
...

日本人がその会社の購入実績の大きい順番で日系企業を訪問し、日本語の通じるローカル企業を訪問するだけで、タイの実情をどのように把握するのだろうか。

...
日本人もいなければ、高価な日本製の部品も使っていないそのような[タイ人の]会社が、孫受け、ひ孫受けで実際の金型を作っている。
せっかく時間とお金をかけて調査に来ても、来た人も来られた会社も日本病に侵されている。
報告書は、自社の製品の優秀さを実証出来た事と、明るい希望に満ちた将来像にあふれていることだろう。
自社の製品を使っていない会社を訪れ、何故使わないかを調べなければ、「調査」にはならないような気がする。

あまりにもありがちな感じです。今日も世界中の都市の日本人駐在員や視察団員たちが、現地人の無能さを酒の肴にしながら、談笑しているのでしょうね。まあ、彼らは通常、高級マンションに住んで貴族のような生活をしているので、ローカルな人たちの本当の生活を知らないことが多いのですが。日本の現状と比較すれば、至らない点が多い新興国の人たちではありますが、少なくとも日本人にないものをひとつ持っています。それは、熱意です。明日を切り開こうという激しい情熱です。どんなに優秀でも情熱のない人(あるいは組織)に未来はないと思うのだけどなあ。

実は、昨日も仕事上でつながりのある方々(日本人)とお話をする機会があったのですが、話がどうもかみ合いません。日本は世界の他の国に比べてやがて相対的に貧しくなっていくだろうが、自分たちの生活には関係ないと信じておられるようでした。本当にそうでしょうか?世界と日本の情勢がまったく無関係であるならば、なぜ明治の人たちはあれほど熱心に富国強兵を進めたのでしょうか?攻める攻められるの帝国主義の時代ではありませんが、しかし、経済的には明治時代よりはるかに緊密に世界と連結している現代です。日本という国が、改革への熱意を失ったまま漂流した先は、ひょっとしたら現在の夕張市のような経済的破綻かもしれません。夕張市の人たちだって、べつに飢えてはいないでしょうが、とても将来に希望が持てる状態ではないのと違いますか?

日本人にとって、日本経済が縮んでいくことに、いいことは何もないはずなのです。全体のパイが小さくなれば、誰かにかならずしわ寄せが来ますから。一部でより豊かになる人たちが出てきたとしても、それ以上に貧しくなった人たちから強烈な恨みを受けることになるでしょう。住みづらい国になるでしょうね、日本は。

もっと過激なことを書いてもいいのですが、反感を受けそうなので、これくらいにしておきます。

最後に日本病の特徴その1を再掲して終わりたいと思います。

第一に、日本病の感染者は、自分が日本病の病に罹っていても、容易にそれと気づかないという傾向が強いこと。(感染意識の欠如)

胸に手を当ててもういちど考えてみてください。あなたは日本病にかかっていませんか?