破滅待望論

どっかのワーキング・プアに関する論客が、「格差社会の弱者である我々には、もはや戦争だけが希望だ」と言ったとか言わないとか。しかし、日本の現実が変わるには、戦争まで行かなくても、もうちょっと平和的で穏健なやり方があるよ。大企業が倒産すればいいのだ。こういうことをいうのは一種のタブーなのかもしれないけど、大手家電メーカーあるいは自動車メーカーの一つや二つが倒産すればいいのに、と本気で思う。いくつかの大企業は、売上利益率や株主資本利益率が極端に低い。にもかかわらず、有名大学出身の優秀な人材を大量に抱え込んでいる。人的リソースを有効利用していない以上、解放してほしいのだ。

日本で、新産業が育たないのは、優秀な人たちが大企業の正社員として、一種の「定年まで安泰」幻想に浸っていて、たとえば40代とか仕事人として脂の乗り切っているときに、あえてリスクを取って起業したりベンチャー企業に転職したりする動機がまったくない、というのは非常に大きな要因だろう。まあ、卑近な例でいえば、私自身は東大経済学部出身で、大学の同級生のほとんどは官公庁や大企業で働いているけれでも、久しぶりに会うと、みんな死んだ魚のような目をしているというか、安定しているんだけど、先がもう見えてるという感じで、覇気は感じない。大学時代は、あんなに面白かった連中が、こうやって、退屈なただのおっさんになっていくのを見るのは、やや忍びない。(もちろん、本人たちの認識としては、自分たちが不幸だとは思っていないんだけどね。むしろ一定の幸福感は感じているようだから、外野がとやかくいうことではないのだろうけど)

アメリカでは、リーマン・ブラザースが破綻した。経済にとって、短期的にはもちろんマイナスだが、むこう10年を見ると、きっとリーマン出身者が起業したりして、面白い企業とか出てきたりするんだろうな、とか思うと、やはり企業が倒産するというのは悪いことばかりじゃないな、と思わされる。

この世の春を謳歌していたテレビ局でさえ、営業成績の落ち込みが顕著な今日日、いまの大企業が10年後全部生き残っているとは限らないと思うんだが。日本に再び活気を取り戻すには、まずは「大企業に入れば安泰」幻想が爆破され、リスクを取ることが評価される社会に変化させる必要があるだろう。