パンスターフェリーで出会った人たち

パンスターフェリーは、大阪・プサン間を航行する定期フェリーである。豪華客船と呼んでもいいくらいに、さまざまな施設を備えている。展望風呂やサウナ、ステージを備えた宴会場まであるのには、驚いた。LG 25 という韓国のコンビニもある。面白いのは、船内で売っているモノの値段が地上とほとんど変わらないことだ。良心的だ。ということで、時間に余裕のある方は、パンスターフェリーをお勧めする。毎日大阪港から15時ころ出航する。価格は、諸経費込みで、一番安いクラスで、18600円/片道。

パンスターフェリーの運営会社は韓国だというせいもあるのか、船内のサービスは基本的に韓国人向けで、乗客も韓国人のほうが多い。日本人は、数えるほどである。スタッフは韓国人と国籍不明の浅黒い肌を持った外国人。どうやら韓国人が重要な職務につき、その外国人が補助的な仕事をするという役割分担らしい。この外国人には、韓国語もあまり通じず、やや戸惑った。

一日目、淡路島のあたりを航行しているとき、甲板で韓国人に声をかけてみた。彼は、年のころ30前後、会社員だが遅めの夏休みを取って、一人で旅行をしているという。彼は、初めて日本に来たという。「いままで日本にそれほど興味を持っていなかったが、日本は街が清潔で、いろいろ韓国は学ばなければならないと思った」としきりに言っていた。その素直な見方に私はやや感動した。日韓関係は、すれ違いが多く、不必要に互いに憎悪したりする部分があったが、こうやって現実の日本を見て、日本に対して現実的な考え方をする韓国人が増えれば、少しずつ両国の関係もよいほうに進むのではないかと思った。

もう一人、60代の日本人男性とも話をした。元公務員ですでにリタイヤしたらしい。韓国に語学留学に行くという。スーツケースが重い重いとさかんにこぼしていたが、それは教科書が詰まっていたからだ。60代になって語学を学ぶのはなかなか大変ではないかと思ったが、実は趣味というより、最終的には韓国で仕事ができないか、考えているという。彼は、飄々とした大阪弁で、「日本は、根本的な改革ができない。もうだめではないか。韓国は日本より活気があっていい」と言っていた。韓国は韓国でなかなか難しい問題を抱えているとは思うけれども、外国に目を向ける人たちが、日本の現状について、みな似たようなコメントを残すのは興味深い。

天気にも恵まれ、楽しい船旅になった。