南昌到着

一等寝台車は静かで揺れもほとんど感じなかった。快適さのなかで、一日の疲れが出て、心地よい眠りに落ちた。列車は、ほぼ定刻どおり、午前6時前に南昌駅に到着。コンコースは人々の熱気であふれていた。列車を待つ人々がそこかしこに座り込んでいる。床には食べかすのピーナッツの殻やヒマワリの種、そして正体不明の液体が散乱している。中国人の怒号が飛び交い、この世の果てのような風景であった。主な乗客たちは行楽地から帰ってきた学生たちだった。私は、この南昌駅から、5月にも訪れた「熱血美人日本語教師」あきえさんが待つ大学へバスで向かった。バスは駅へ次々と到着するが、そのたびに乗客が押し寄せて、私はなかなか乗り込むことができない。15分ほどそんな光景を呆然と眺めた挙句、私は意を決して、人垣をかきわけて、自分の身体とスーツケースをバスの中に押し込んだ。

あきえさんの案内で、南昌の田舎と街中を延々とバスを乗り継いで、南昌ハイテク開発区へ出かけた。ここにある南昌国際ビジネスセンターを見学させていただいた。これはある日本の不動産会社が作ったビルで、事務所や居住区を備えている。日本人が常駐し、日本企業が中国語を知らなくてもすぐに進出できることを売りにしている。施設は新しく非常にきれいである。ただ、残念なことにオープンしてしばらく経つものの、進出企業はまだないそうである。正直、公式料金はやや割高であるように感じたが、交渉は可能であるとのこと。南昌という都市の日本における知名度の低さ、日本からの飛行機の直行便がないこと、などがネックだろうかと想像した。

実は、昨日も杭州で最大の開発区を訪れている。工業団地とは思えないほど、緑が豊かでまるで公園のようだった。道路は広く完全に整備されていて、ここはアメリカだといわれれば信じてしまうくらいだった。そうかと思えば私がいま泊まっている大学の招待所(中国では大学の中に招待所と呼ばれるホテルがあることが多い)の近くにも、まだ舗装されていないガタガタ道があったりする。中国は、進んだものと遅れたものが共存し、その落差が実に大きいので、日本人はどれが本当の中国かいつも戸惑うことになる。