中国とベトナムの違い

まだベトナムに到着して一日も経たないし、外を歩き回ってもいないので、大きなことは言えないが、それでもいくつかの点で中国とベトナムの違いを痛感せざるをえない。まず人である。ベトナムは人が優しい。いま泊まっているエリアは、欧米人旅行客がたむろするゲストハウス街であり、ここにいるベトナム人たちは欧米人に慣れているということもあるのだろうが、物腰が中国人に比べると遥かに柔らかい。フレンドリーなのだが、なれなれしくもない。日本人にはちょうど気持ちのよい距離感である。

いま泊まっている Tung Trang Hotel、ゲストハウスなのだが、ゲストハウスというよりペンションという感じのしゃれたホテルである。たぶん私のとまっている部屋は一番よい部屋であろう。コロニアル風の内装だ。狭い通りに面した大きな窓の外には古い木の濃い緑の葉が一面に広がっている。天井は高く、三つの翼の付いたファンが据え付けられている。木製の大きなダブルベッド。壁は薄いピンクで、床はベージュのリノリウムである。光沢のある木製の小机と椅子が2つある。明るく、実に気持ちのよい部屋だ。これなら US$20 でも文句はない。

驚いたことに、このホテル、料金後払いなのである。日本ですら、安いホテルは料金先払いなのに。中国にいたっては、押金(ヤージン)と言って、何事にもデポジットを払わなければならない。たとえば一泊 150 元のホテルに泊まったとする。するとまず 200 元をホテルに渡す。宿泊費の 150 元を先払いするだけでなく、50 元をデポジットするのだ。なぜ中国でこうするかというと、ときどき日本では信じられないようなことをする宿泊客がいるからだ。たとえば以前は、部屋の電球が盗まれることが多かったらしい。トイレットペーパーも丸ごと持っていってしまう客が多いため、中国のホテルでは、一日に必要な分だけの小さなトイレットペーパーだけが渡される。

ところが、このホテルは、パスポートのチェックはするものの(これは法律で定められた義務らしい)、クレジットカードを見せろとさえ言わない。うむ。客を信用しているのか、ちょっと抜けているのか。中国のような生き馬の目を抜くような社会から到着したばかりの身には、拍子抜けする感じである。ただ、ハノイは、外国人観光客をだまそうとするベトナム人もいるという。いまのところ順調だが警戒は怠らないようにするつもりだ。

残念なのは、インフラ周りだ。道路にしろなんにしろ、やはり中国のほうが進んでいる。インターネットの接続速度も極度に遅い。ホテルの受付の女の子と話をしたところ、ベトナムでは、たいていインターネットは遅いという。実は、今回、大学などにネットで連絡を取ろうとしたが、うまくいかなかった。ベトナムはまだインターネット後進国なのかもしれない。その点、南寧のホテルで使ったインターネットは実に早かった。ssh で日本のサーバにログインしても特に遅延を気にすることなく、まるで日本国内同様に作業ができた。私は、インターネットを使った事業をするために、ベトナムに来ているわけで、これは由々しきことといわざるをえない。

ベトナムのインフラ整備の遅さを考えると、たぶん有線系で高速インターネットを求めるのは難しいかもしれない。LTE のような次世代の高速無線通信網が整備されて、はじめてインターネットがきちんと使えるようになるのかもしれない。それまであと数年待たねばならないのだろう。