洪水状態のホイアン

雨はいつまでたっても止みそうもない。私は、意を決して、雨をおしてホイアンの旧市街の観光に出かけることにした。雨合羽をホテルで借り、傘を差して出かけるものの、土砂降りの雨のなか、身体の隅々まですぐに水が入り込んでくる。道路はくるぶしまで水があり、濁流の川のようになっている。

ホイアンは、かつて貿易のため、日本人がここまで来て、日本人街まで形成していた古い港町である。古くから、世界各地との貿易港で栄えていたそうである。その中で、日本人が作ったと信じられている橋があり、そこまで行ってみた。橋自体は、変哲もない中国風の丸橋だが、その下を流れる川が氾濫して、あたり一帯が茶色の公園のようになっていた。その茶色の公園の向こう側、200メートルくらい先に、観光客か地元民かわからないが、人影が動いているのが見える。どこが道だか川だか海だかさっぱりわからない。

旧市街の中心的な通り、チャンフー通りを歩いていく。両側には、中国風の建物が並んでいるが、ほとんどがしゃれた土産屋になっている。ある交差点から海の方に目をやると信じられない風景を目にした。チャンフー通りと平行する、一ブロック海よりの道が完全に水没し、その両側の土産屋は床下浸水状態である。その洪水状態の道とまだ浸水を逃れている道の部分、つまり新たにできた「岸」に、木製のボートがこぎつけていて、激しい雨の中、三角帽(ノン・ラー)をかぶった二人のおばさんが悠然と客を待っている。どうやら、水上タクシーのつもりらしい。

貿易陶磁博物館やホイアン歴史文化博物館を見学。本当は、US$5 くらいの共通チケットの購入が必要なのだが、豪雨のため開店休業状態で、係員は、チケットなしで中に入れてくれた。貿易陶磁博物館は風格のある木製の建築物で、かつての民家をそのまま使っているそうだ。17世紀に日本から運ばれてきた肥前焼の陶器が展示されていた。よくこんなところまで、日本人はやってきて、住み着いたものだと感慨深かった。

ホイアン・「水上タクシー」(写真) http://www.flickr.com/photos/26605052@N06/2949056134/