ベトナムの結婚式

昨晩は、タムさんのお兄さんの結婚式に出席した。ベトナムでは、日本ほど出席者の選別が厳しくなく、比較的気軽に招待するようだ。

タムさんのお兄さんの結婚式は、日本と同じく、結婚の誓いを立てる儀式と披露宴の二本立てだった。儀式のほうは、親族だけが参席する。私が招かれたのは披露宴のほうだ。

夕方、ニャットさんと渋滞をかいくぐって、ホーチミン中心部からやや離れた(それでも街中だが)結婚式場に到着した。この結婚式場は、新しく巨大で宮殿のように豪華である。おそらく10以上の大ホールを備えている。

会場の入り口で、新郎新婦に挨拶し、タムさんの案内で着席する。巨大な会場で、無数の円卓が並び、そのまわりに人々が座って談笑している。その数は300人以上。日本のように席順が決まっているわけではなく、参席者は適当に座っていく。会場の前方には、巨大なイミテーションのウェディングケーキと、積み重ねられたカクテルグラスが飾られている。ここまでは、雰囲気が雑然としていることを除けば、日本の披露宴とそれほど印象は変わらない。

突然、ライトが消えた。停電か?と思った瞬間、音楽が大音響で鳴り出した。プロの司会が何やら前方のステージで喋っている。あっけにとられてそれを見ていると、バレリーナの男女の集団が現れ、ロマンチックな音楽にあわせて、優雅な踊りを舞い始めた。なんという演出だ。見ているほうが恥ずかしくなった。その後、新郎新婦が登場した。タキシードとウェディングドレスの新郎新婦がステージに立って、参席者にむかって頭を下げると、今度は、新郎新婦のご両親が登場して、若い二人の両側に立った。しかし、日本のような長ったらしいスピーチは一切なし。挨拶が終わると、会場のウェイターたちが忙しく料理をテーブルに運び込んできた。

その後は、単なる宴会にしか見えなかった。プロの歌手が歌ったかと思えば、参席者のなかの一人のおじさんが、調子はずれに歌を歌ったりと、カラオケ大会のような様相。参席者は、ステージに関心を払わず、酒を酌み交わしながら、テーブルでの談笑に興じている。日本の披露宴のような厳密な司会進行は一切なし。

参列者の服装もまちまち。盛装の人もいれば、隣に座ったニャットさんはGパン姿の普段着。私は、スーツがなかったので、一番きれいな襟付きのシャツでごまかした。不思議なのは、ベトナムの伝統的正装であるアオ・ザイ(ao dai)を着ている女性参席者がほとんどいなかったことだ。ほとんどは、洋式のパーティドレスを着ていた。現代ベトナムでは、アオ・ザイはすっかり、高校生やサービス業の制服という地位になってしまったらしい。ただし、地方ではまだまだ結婚式でアオ・ザイを着ることは多いそうである。

参席者はとにかく披露宴を楽しんでいる。そこらじゅうから「ヨー(乾杯)!」という威勢のよい声が響いてくる。ああ、日本の結婚式よりこっちのほうがいいや、と正直思ってしまった。韓国の結婚式もベトナムなみにいい加減だった。日本の披露宴はとかく窮屈すぎる。結婚するなら、ベトナムで結婚式をやろう。

結婚披露宴の写真