ベトナム人について

私は、ベトナムホーチミン市に来て約半年が経った。この半年はあっという間で、そんなに長くいたという感じがしない。

この国にいて、特に何の抵抗も感じないからだろう。綿に水がしみこむように、自然にベトナムの事物が私の体の中に溶け込んできているようだ。私はここにいて自然な感じがするらしい。

私はサイゴンではほとんど日本人の知り合いがいない。付き合っているのは、ほとんどがベトナム人だ。ベトナムなんだから当たり前だろうと思うかもしれないが、実は、これはなかなか珍しいことだ。海外居住経験のある人は理解できるだろうが、文化や言語の違いから、海外に行っても、日本人で固まって暮らすことが多いものだ。ところが、いま私は少しベトナム人に慣れすぎている。日本人観光客を見ると逆に違和感を覚えるくらいなのだ。

私は、いままでいろんな国に住んだことがある。カナダに4年。中国と韓国に半年ずつ。その経験からいえるのは、これからベトナムに対していろんな思いを抱くであろう、ということだ。いまのところ私の友人のベトナム人はみな素晴らしい人たちだが、悪いベトナム人もいるに違いない。これから、ここで仕事をするようになると、うんざりするような経験もたくさんすることになるだろう。いまが幸せなので、このまま余韻に浸っていたい気もする。だが、私は前に進まなければならない。たとえ最後にすべてを失うことになったとしても。