IT業界に関する統計
私はいまどこにいて、どこへ向かおうとしているのか
ここ数年の私のフラストレーションは、自分が今している仕事が、この業界で、あるいはこの経済のなかでどういうポジションを占めているか、わからないという点にあった。それを知るためには統計にあたるしかないだろう。
たかが数字、されど数字
しかし、統計というのは、なんともはかないものだ。そもそも観察対象の分類次第でいくらでも数字が変わってきてしまう。そんな頼りない数字だが、しかし、それでもないよりはましだろう。数字がまったくなければ、おおよその目算もつかなくなってしまうからだ。
IT業界の現在を計る最も包括的な統計 = 特定サービス産業実態調査
経済産業省が毎年行っている「特定サービス産業実態調査」というものがある。日本標準産業分類(JSIC)の小分類ごとに一部のサービス業の実態を1年に1回調査したものである。*1
調査対象となる産業は、私たちの関心のある「391 ソフトウェア業」、「392 情報処理・提供サービス業」のほかにも、「881 各種物品賃貸業」「891 広告代理業」「411 映像情報制作・配給業 」などさまざまだ。実は、はてなー的には関連が深いであろうと考えられる「401 インターネット附随サービス業」というものがある。これについては、とりあえず今回は触れない。(3桁の数字は JSIC の小分類を意味する)
まず大胆に結論
では大枠を見てみよう。平成20年特定サービス産業実態調査(速報)の概況によると、次の通り。
事業所数 | 従業員数 | 年間売上高 | |
391 ソフトウェア業 | 12,300(前年比24.4%増) | 618,050人 | 14兆8,179億円 |
392 情報処理・提供サービス業 | 5,430(前年比14.4%増) | 238,645人 | 4兆0,035億円 |
JSIC の中分類「39 情報サービス業」に属する小分類は上の2つしかない。これが、政府の立場からすると情報サービス業のすべてということなる。
しかし、私の頭の中には早くも疑問符が・・・。「ソフトウェア業というのはわかるにしても、情報処理・提供サービス業って何だよ」というツッコミである。
情報処理・提供サービス業って何だよ
早速、JSIC における定義を見てみる。
3921 情報処理サービス業
電子計算機などを用いて委託された計算サービス(顧客が自ら運転する場合を含む),データエントリーサービスなどを行う事業所をいう。
○受託計算サービス業;計算センター;タイムシェアリングサービス業;マシンタイ
ムサービス業;データエントリー業;パンチサービス業
3922 情報提供サービス業
各種のデータを収集,加工,蓄積し,情報として提供する事業所をいう。
○データベースサービス業(不動産情報,交通運輸情報,気象情報,科学技術情報な
どの提供サービス業)
×市場調査業[3929];世論調査業[3929];ニュース供給業[4151];興信所[8091];
観光案内業(ガイド)[8399]
3929 その他の情報処理・提供サービス業
市場調査,世論調査など,他に分類されない情報処理・提供サービスを行う事業所をいう。
○市場調査業;世論調査業
×情報提供サービス業[3922];経営コンサルタント業[8093
(○は含まれる業界。×は含まれない業界)
ますますわけがわからなくなる。「3929 その他の情報処理・提供サービス業」はなんとなく分かるにしても、「3922 情報提供サービス業」は情報技術(IT)とは直接関係ないような気もするし、「3921 情報処理サービス業」の「各種のデータを収集,加工,蓄積し,情報として提供する事業所」に至っては、なんだかさっぱりわからない。統計表データによると、「情報処理サービス」の年間売上高は、全国3,124事業所で合計1兆6423億円にも達するのだが・・・。こんなに大きな産業なのに、どの企業が相当するのかさっぱりわからないってどうよ。
有名企業だけでいいから、どの企業がどの分類に属することになるのか、具体的に表示してほしいなあ・・・。まあ、「プライバシー保護」の観点からそれができないのかもしれないけど。全然イメージが沸かない。
というわけで、次回に続く・・・。
*1:他に特定サービス産業動態統計というものがあるが、これはまったく別物。「実態調査」のほうは全数調査で年1回なのに対して、「動態統計」のほうは業界の大手企業のみを対象にした抽出調査で毎月行っている。最初はこの違いが分からずハマッタ・・・