IT業界に関する統計(その3)

391 ソフトウェア業の研究の続き

さて、前々回前回の続き。日本の情報サービス産業≒IT産業の実態に迫るため、経済産業省の「特定サービス産業実態調査」を見ていく。

第5表 ソフトウェア業務の契約先産業別の該当事業所数及び年間売上高

細かい数字は、ここから拾える。(平成20年特定サービス産業実態調査(速報) ソフトウェア業 統計表データ(Excel 2003形式))

契約先産業 年間売上高(百万円)
製造業 2,672,053
同業者 2,310,360
金融・保険業 2,159,392
公務 981,211
情報通信業 937,351
卸売・小売業 741,758
サービス業 633,763
その他 614,811
電気・ガス・熱供給・水道業 138,506
建設業 118,265
運輸業 112,275
不動産業 28,328
飲食店, 宿泊業 24,573

これは、なかなか興味深い表である。ソフトウェア業の顧客がどの産業にあるか示したものだ。これを見ると、製造業、金融・保険業、公務(政府・地方自治体)、情報通信業などが主要顧客であることがわかる。これは、私の体感にも一致する。日本のIT業界の2大顧客は、突出して、製造業と金融・保険業であり、両方とも2兆円を超える売上がある。(そして、どちらも将来が暗いという事実が、日本のIT業界にも暗い影を投げかけているのだが・・・)

製造業や金融・保険業のIT投資額の大きさに比して、不動産業や飲食店、宿泊業の投資額のしょぼさ(どちらも300億円以下)がいかにも目立ってしまう。これらは、国内市場を相手にする典型的な規制産業で、「生産性が低い」と槍玉に上がっている産業である。特に不動産業のしょぼさはなんとかならないものか。不動産業は、土地や建物というモノを扱っているように見えて、実際にはその価格・賃料・契約内容といった情報を処理する情報産業であるはずだ。自分の経験からいうといわゆる賃貸アパートの紹介をする「街の不動産屋」にはいまだにパソコン一つ置いておらず、ファックスだけで仕事しているところも多い。あれは明らかに業界の談合によって細々と成立している業界で、その背後には行政や政治家との癒着があるのだろう。あーヤダヤダ。

逆にいえば、なんらかの業界の改革が行われれば、積極的なIT投資が行われるようになるのかもしれない。潜在的な成長産業ともいえるのかもしれない。

重層下請構造が見えるか?

さて、実は契約先産業の第2位は、「同業者」であり、2兆3000億円程度の売上がある。まあ、これは簡単にいうと、下請企業の元請企業への売上と考えていいだろう。

従業者規模別計 売上高合計(百万円) A うち同業者向け(百万円)B 構成比(B/A)
4人以下 77,495 19,886 26%
5人〜9人 187,334 47,734 25%
10人〜29人 801,378 265,667 33%
30人〜49人 619,769 228,624 37%
50人〜99人 1,078,101 365,348 34%
100人〜299人 1,989,940 509,691 26%
300人〜499人 834,412 188,697 23%
500人以上 5,884,217 684,715 12%

従業者規模別に、同業者向け売上が全体に占める割合を算出してみた。普通、規模が小さいほど、下請けの仕事がメインであると考えられるのだが、数字上は興味深い結果になっている。「30人〜49人」の事業所が同業者向け売上が37%で最大になっている。「4人以下」は26%と案外数字が小さい。まあ、確かに「30人〜49人」の規模というのは、月々相当の固定費がかかっているにも関わらず、ネームバリューがなくて、営業力がないところが多いのかも。そうするとどうしても大手の傘下の下請け企業にならざるを得ないのかもしれない。

はっきりしているのは、「500人以上」では12%しかなくて、元請(ITゼネコン)になっている可能性が高いということだ。この数字だけでは、正直、「重層下請構造が鮮明に見える」というところまで行かないかなー。

次回は、日本におけるゲームソフトウェア産業の地位や、海外のIT産業との比較を探っていこうと思う。ではでは〜。