GDP とは何か
私は昔、大学で経済学を勉強したのだが、すっかり忘れている。復習を兼ねて、そもそも「GDPとは何か」ということを説明しようと思う。はっきりいって間違いも多く含まれていると思うので、気が付いたら訂正をお願いします。
GDPとは、「ある地域で一定期間に生産された付加価値の総計」である。*1
たとえば、ある村で、ある年の初めに、1個100円のリンゴがすでにあったとしよう。ここに、ジュース屋さんがあって、このリンゴをミキサーにかけて、1杯のジュースを作り、300円で売ったとしよう。この年にこの村で行われた生産活動は、これだけだとしよう。(極めて非現実的な仮定ではあるが) このとき、この年に「生産された付加価値」はいくらだろうか。
答えは、ジュース300円 - 原料のリンゴ 100円 = 200円、ということになる。この年のこの村の GDP は 200円ということになる。
GDP(生産面)
では、もう少しモデルを複雑にしてみる。
この村には農家とジュース屋さんだけが存在するとする。農家はリンゴを作り、ジュース屋さんは、このリンゴ農家からリンゴを買って、ジュースを作って売る。リンゴ農家が使う肥料とか、ジュース屋さんのミキサーの電気代とか、とりあえず無視。これはあくまでも概念を理解するための例であるので。
この村で、ある年の初めには、リンゴが1個もなかったとする。リンゴ農家は3個のリンゴを作って1個100円で売る。ジュース屋さんは、この3個のリンゴを農家から買う。そして、1杯のリンゴジュースを300円で農家に売り、1個のリンゴを自分で食べ、残りの1個は、来年のために取っておくとしよう。
この村のこの年の GDP はいくらだろうか。この経済に存在する経済主体は農家とジュース屋しかないので、農家とジュース屋の付加価値生産の総計が GDP になる。
- 農家の付加価値生産額: リンゴ3個 x 100円/個 = 300円
- ジュース屋の付加価値生産額: リンゴジュース1杯 x 300円/杯 - リンゴ1個 x 100円/個 = 200円
- GDP(生産面) = 300円 + 200円 = 500円
ということになる。これが GDP の最も基本的な考え方であり、これを実情に合わせて、複雑にしていったのが、現実の各国のGDP統計ということになる。
GDP(支出面)
さて、作られた付加価値は、何らかの形で処分(使用)されるはずである。上の例では、この村で1年間に、リンゴ3個とリンゴジュース1杯が生産されている。これらが実際にどのように処分されたかというと次の通りである。
- 最終消費: リンゴ1個 x 100円/個 = 100円(ジュース屋が自らたべた1個分だけ計上する。ジュースの原料に使った分は、最終的に消費されたものではないのでここではカウントしない)
- ジュース1杯 = 300円
- 合計 400円
- 在庫投資: リンゴ1個 x 100円/個 = 100円
- GDP(支出面) = 400円 + 100円 = 500円
ということになり、GDP(生産面) = 500円と一致する。これは、作られた付加価値がどのように処分されたかを表現したものなので、GDP(生産面) = GDP(支出面)は必ず成立する。これは、恒等式である。*2
GDP(分配面)
作られた付加価値は、必ず誰かに所属するはずだ。(価値がある以上、誰も欲しがらないということはありえないので・・・)言葉を言い換えれると、各経済主体の所得はいくらだろうか、ということになる。上の例では次のようになるはずだ。
三面等価
というわけで、結局次の恒等式が成立する。
GDP(生産面) = GDP(支出面) = GDP(分配面)
これは、別に「宇宙の神秘に触れるすごい定理」とかいうものでもなんでもなく、単に「1枚の紙は、表から見ても裏から見ても表面積は同じだよね」という程度のごく当たり前の恒等式だ。
次回、産業連関表
上の「農家とジュース屋」の例を取って、産業連関表という概念を説明する。これを理解すると上のたとえ話がより深く理解できるはずだ。