日本株式会社の落日

リコール問題に揺れるトヨタへの風当たりが英語圏で強まっているらしい。

BBC News - Recall tarnishes Toyota's spotless image

BBC News は「リコールがトヨタの完璧なイメージを傷つけている」と題した記事を掲載した。アメリカで「加速が止まらない」車が事故を起こしたことが、アメリカでのトヨタの評判を相当落としているようだ。

トヨタ自動車 - Wikipedia

2009年9月29日に、アメリカ国内で販売した「カムリ」(2007-10年型)のほか「アバロン」(2005-2010年型)、「プリウス」(2004-09年型)、「タコマ」(2005-10年型)、「タンドラ」(2007-10年型)、「レクサス・ES350」(2007-10年型)、「レクサス・IS250&IS350」(2006-10年型)など7車種の乗用車計約380万台を、運転席のフロアマットが外れアクセルペダル操作を妨害し深刻な事故につながるとして、リコールする見通しとなった。380万台のリコール台数はトヨタアメリカに進出して以来の過去最大規模のリコールとなる。さらに2009年8月にはカリフォルニア州サンディエゴでアクセルが戻らなくなり4人が亡くなる死亡事故も起こっている。

私は自動車産業の専門家でないので、詳しいことはわからないが、どうやらアメリカ人たちが怒っている最大の原因は、トヨタの反応の遅さらしい。

トヨタの自動車輸出は日本の貿易黒字の大きな部分を占めている。財務的には、10兆円以上の自己資本と潤沢な現金を抱えており、簡単には潰れそうもない(JAL とは大違いである)。 トヨタは日本を代表する優良企業である。

日本株式会社」の象徴ともいえるトヨタの評判毀損は、日本経済のそのものの再評価へと結びつきかねない。たまたま今は GDP では中国に世界第二位の地位を奪われ、膨大な政府債務が積みあがろうとしている時だ。英語圏のエリートたちは、国際社会で強い影響力をもっている。彼らに「日本経済の衰退」を印象付ける材料をもうひとつ与えてしまったとすると残念である。

トヨタがなぜこうした問題を今回起こしてしまったのか、そしてその問題対応のまずさによって、世界の多くの人たちに不信感を植え付けることになってしまったのか、その原因はよくわからない。

だだ、最近、新たに問題になりつつあるハイブリッド車プリウス」のブレーキ制御の問題に関して言えば、ソフトウェアの問題であるようだ。自動車が「家電」になりつつある過渡期の現象といえる。これがパソコンなら、インターネットで修正プログラムをダウンロードして、制御用ソフトウェアを書き換えるという形で、問題に対応する。いまの自動車は、まだインターネット接続が前提になっていないので、そういう形での問題対応は難しいかもしれない。だが、これから自動車の電子化が進行するにつれて、そうした継続的なソフトウェアアップデートの方法について、検討する必要が出てくるだろう。(しかし、これはセキュリティの問題をきちんとしないと、恐ろしい結果になりそうだなあ・・・)

自動車の動力源が、内燃機関(エンジン)から電気へ移行するのは、不可避の情勢である。電気自動車は、構成部品数が少ないため、パソコンで起こったのと同様の製造の水平分業が起こると考えられている。トヨタお得意の、垂直分業による「すりあわせ」的生産様式が、用無しになる可能性がないとはいいきれない。トヨタは新しい時代に生き残れるだろうか。

トヨタが凋落すると、1兆円近い法人税と関連する数十万の雇用が失われることになる。日本経済には深刻なダメージになりかねない・・・。

でも、仕方がないのかもしれない。いまどき先進国で製造業は流行らないからね。本当は日本経済は、より付加価値の高い産業へ前進すべきなんだが・・・。と20年言われ続けてどうにもならなかったので、私にも答えはわからない。ホント、どうしたらいいんだろうね。