書評「バフェットの謎」

前回のオフ会で、技術評論社の編集者の方から一冊の本を頂いたので、お礼代わりに書評を書いておく。池田信夫スタイルで、やや厳しいこともいうかもしれませんがその点はご容赦を。

世界No.1投資家バフェットの謎 ~何がその成功をもたらしたのか?

世界No.1投資家バフェットの謎 ~何がその成功をもたらしたのか?

公認会計士の著者、庄治卓矢氏が、世界的投資家のウォーレン・バフェットが自社の株主に送り続けた幾多の手紙(事業報告書)から、バフェットの成功の秘密に迫るという趣向である。

この本のクライマックスは、第4章「会計の本質を見抜く」だろう。バフェット流の財務諸表の読み解き方を解説したものだが、さすが公認会計士だけあって、財務諸表への切込みが鋭い。私がそもそも USCPA 受験を思い立ったのも、去年の秋、政府の財政統計や企業の年次報告を調べていて、「そもそも、こういう数字は何を意味しているのか?」ということを深く理解したかったからだ。

著者が言うとおり、財務上の数字というのは、比較的簡単に操作できてしまうものだ。そのため、作られてきた過程をきちんと理解しないと、数字の向こう側にある本質が把握できない。バフェット流の財務諸表の見方は、長い投資経験に裏打ちされた奥深さがあり、さすがと唸らされる。

ただし、この第4章は、財務会計に関する専門知識がないとちょっと理解が難しいかもしれない。第4章以外の内容は平易すぎて、やや凡庸である。どのような読者を想定するか、最後まで著者の中で迷いがあったのかもしれない。

あえて苦言を呈するとすれば、いくらバフェットが有名人とはいえ、彼の名をダシに読者の関心をひきつけようというこのタイトルは、マーケティング手法としてはやむをえないとはいえ、やや残念な感じもする。著者は、公認会計士で会計のプロなのだから、ぜひ自分の名前を全面に押し出して、独自の投資理論を発表していただきたい。(とかいいつつ、もう他に書いていらっしゃるのかもなあ)文中で、どこまでがバフェットの考えで、どこまでが著者の考えなのか、はっきりしなかったのも残念だった。

いくつかの難点はあるものの、財務会計に関する知識があり、長期的な株式投資に興味をもたれているまっとうな投資家の方々は、第4章のバフェット流財務諸表解読法だけでも読んでみる価値があるのではないだろうか。