福島第一原発に存在するプルトニウムの量を推定する

ウラン 235 の燃焼速度から使用済み核燃料の量を計算し、現在、福島第一原発に存在するプルトニウムの量を推定した。

1Kg の ウラン235 は 1000 / 235 = 4.5 (mol)。1 mol の ウラン235 が核分裂すると1.8e+13(J)の熱を出す。したがって、1Kg の ウラン235 は 4.5 * 1.8e+13 = 7.7e+13(J) の熱を出す。

ウラン燃料の大部分は核分裂を起こさないウラン238であり、核分裂するウラン235 を 3% 程度含む。1Kg のウラン235を含むウラン燃料は 1 / 0.03 = 33 Kg。従って 1Kg のウラン燃料は、ウラン235が完全燃焼すると仮定すれば、7.7e+13 / 33 = 2.3e+12 (J) の熱を出す。

1 W の熱源は1秒に 1J を発する。1W の熱源から1時間=3600秒間得た熱の総量は 1Wh になる。従って 3600 = 3.6e+03 (J).

1Kg のウラン燃料は燃焼すると 2.3e+12 (J) の熱を出すのだった。これを Wh に変換すると、2.3e+12 / 3.6e+03 = 6.4e+08 (Wh)

福島第一原発の総発電量は2009年度に32,949 (100万KWh)。発電実績は毎年変動するが平均1年で 3.0e+13(KWh)程度と考えてよかろう。原発の熱効率は30%程度なので、熱出力は1.0e+14(KWh/year)と考えてよい。

1Kg のウラン燃料は燃焼すると 6.4e+08 (Wh) の熱を出すのだった。福島第一原発は1年に1.0e+14(Wh) の熱を出す。 このため 1.0e+14/6.4e+08=1.6e+05(Kg), つまり160トンのウラン燃料が必要になる。

純化のため、原子炉内部の燃料もすでに完全に燃えてしまっていると仮定する。何年分の使用済み核燃料が福島第一原発に保管されているのか?これは再処理工場への輸送状況を見ればわかるはずだが手元に情報がない。

ただ、貯蔵量が年々増えている。再処理が滞っていることが想像できる。仮に2年分の使用済み燃料が原発敷地に保管されているなら、160*2=320トンの使用済み核燃料が原発内にある。使用済み核燃料の質量のオーダーは数百トン程度と推定して差し支えあるまい。

使用済み核燃料の成分は、プルトニウムが1%, 核分裂生成物が3%である。仮に福島第一原発に使用済み核燃料が320トンあれば、プルトニウムが3.2トン、核分裂生成物が9.6トンとなる

もちろん上は単純すぎる試算である。実際にはウラン238中性子を吸収してプルトニウム239に変わり、これが核分裂する、などという反応も起こる。また、3号機は、ウラン燃料にプルトニウムを加えたMOX燃料を燃やすプルサーマルである。ただプルトニウムが数トン存在するという結論には変わりないだろう。数百キロでも数十トンでもなく、数トンだろうというのがポイントである。

実際には、5号機・6号機は安定状態にあるようだし、これら数トンのプルトニウムすべてが危険な状態にあるわけでもないだろう。しかしプルトニウムは1トンにつき、2300テラベクレルの放射能をもつ。しかも半減期が2万4千年と長く、いちど高濃度の汚染が起これば取り返しがつかない。プルトニウムは非常に重い物質なので、遠くへ飛散することはないというが、漏れれば原発周囲に深刻な環境破壊をもたらす。今後も注視していく必要があろう。