議会も IT 化しませんか - 横浜市会本会議を傍聴して

横浜市会(市議会)の本会議を傍聴してきた。議会の本会議は初めて。それなりに面白かった。

横浜市会の会派別構成は、自民 30 民主 17 公明 15 みんな 14 共産 5 その他 5 の計86。みんなの党の躍進ぶりが目立ち、30-40代の若くて聡明な感じの議員が多い。

「討論」でみんなの党の篠原議員が、財政健全化と市政効率化の視点から横浜市敬老特別乗車証条例の一部改正について意見を発表していた。基本的に老人福祉ばかりではなく若い人の子育て支援も行うべきとの意見であったが、議員席からヤジの嵐。新人議員をからかうような感じの悪いヤジだった。

傍聴人は30名程度。これまた老人ばかり。40歳の私がたぶん最年少だったと思う。議員席を見ても多くが60歳以上の男性。典型的な日本支配層である。もう少し若者を増やすなり女性を増やすなりできないものか。

市議会の議場を眺めるとなぜ老人の投票率が高く若者が低いのかよくわかる。なぜなら老人たちにとっては同世代の人たちが代表になるので親しみやすいのだ。個人的な知り合いになる機会も多いだろう。25歳以上は議員になれるのだが、若い議員はほとんどいない。若者が感情移入できるわけがない。

横浜市金沢区選挙管理委員会委員の選挙というのがあった。職員が空の投票箱を傾けて議員たちに見せて行く。やたらに儀式張っていた。本会議というのは多分に演劇的である。無料だし、時間があれば見に行くとちょっと面白いかも…(眠くなれば寝るのにも好都合)

気の毒だったのは、林文子横浜市長がほとんど発言することもなくやることもないのに、本会議に出席し続けなければならなかったこと。せめてノートパソコンとインターネットでも使わせてあげれば何もないときに仕事ができるのに。あの忙しい人を3時間も何もせずに縛り付けておくのは酷じゃないか。

横浜市会における選挙管理委員会の選挙だって電子式でやれば一瞬で終わるし、議案の配布資料だって、PC でウェブサイトを見ればいいし、議会というところはいろいろ古くさすぎる。だが、あの高齢議員たちの顔ぶれを見る限り、IT 化は向こう20年は無理なんだろうなと感じざるを得ない。

だぶん議会を IT 化しようとすると、誰かがセキュリティを理由にして反対するのだろう。セキュリティは IT 化を粉砕するのに誠に便利な言葉である。議会なんて最初から公開が全体なんだから何のセキュリティだとは思うけどね。

別にネットで有権者が直接、政策を決める直接民主制に移行する必要はないけど、議会制民主主義の範囲でもいまの議会が情報公開のためにできることは山ほどある。議案の説明がきちんとなされ、市民が議会の様子をネットで気軽に閲覧できれば、人々がもっと気軽に地方自治に参加できるはず。

ただ議員たちは、市民の監視が行き届きにくい今のシステムのほうが気楽だし、傍聴者もネットも使わないような年寄りばかりなので、現状に不満を感じることもないようだ。こうして30・40代は事実上自分たちの意見を代表する者を持たないまま、税金だけ払い続けるわけだ。

日本政府の IT センスの悪さには定評があり、どこから改善したらいいのか想像もつかない。センスが悪すぎる場合、見捨てるのが正解かも。現場では若手が必死に抵抗して頑張っているのだろうが、年寄りが多すぎて多勢に無勢なのだろう。日本の典型的な光景だ。

こんなニュースも。

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楠さんは「薬害被害があった訳でもないのに馬鹿馬鹿しい」とご立腹だが、年寄り相手じゃ無力感ばかりが先に立つ。

司馬遼太郎歴史小説を読む限り、江戸時代のほうが年齢差別は少なかった気がする。当時は家柄のほうが大切で、家柄が上の若様に仕える年寄りというのが普通にいたからじゃないだろうか。いまは士農工商が廃止された代わり、年齢が新しい身分として使われているのかもしれない。

インターネットの登場前後で世界が大変化してしまったのに、年寄りの男性に支配されている日本ではそれが意識されていない。こういうごく狭いデモグラフィック(60歳以上男性)に国の経営を任せてしまうのは非常にリスキーだと思う。

日本は「先輩後輩」文化だから年寄りがはびこる。OB にはめちゃくちゃ弱いし。私は30歳超えたらもう年齢の上下は関係ないと思うけどね。アホな70歳より賢い30歳もいるよ。儒教的影響かもしれないけど、高齢化社会では再考すべきじゃないかな。

日本の政府・地方自治体・財界になぜ危機意識がないか。それは誰がそれを動かしているのか理解すれば答えは簡単。60歳以上の男性が日本を動かしているからだ。彼らは個人として経済的に恵まれ、若い頃日本の絶頂期で充実感を持って仕事をしていた人たちだ。周囲にも似たような人たちしかいない。

60歳以上の彼らは常に同年代の仲間たちと話をして自分たちの信念を強化し合っている。「日本は技術大国、経済大国だ」「日本はやっぱりものづくり」「アジア諸国はまだまだ」「若い連中は鍛錬が足りない」云々。危機感を表明すれば村八分にされるだけ。

選挙に行かない若者の気持ちはわかるよ…あんな脂ぎったじいさんばかりが議員の議会じゃ興味もてないよね。しかし若者が監視しないがゆえにじいさんたちは今日も絶好調…。老人重視の政策が実行され、若者の子育て支援は後回し。というわけで少子高齢化がますます進んで悪循環。

老人増→老人民主主義→老人福祉充実→若者子育て支援削減→少子化→高齢化→老人増→…の無限ループに入った日本。このまま日本人が全員死に絶えるまで突き進んで行くのかな。