TOEIC 800点超限定・本格派英語ディスカッショングループ TEDee
東大駒場キャンパスで行われた TEDee に参加してきた。TEDee とは、TEDビデオを使った英語ディスカッションのグループである。都内6カ所で毎日、週10回以上やっているとのこと。ESS サークルみたいなものとは違って、Facebook 上でサインアップすれば、誰でも参加できるのが特徴だ(TED については「TOEICのリスニング問題よりも100倍以上面白くて刺激的なTEDで英語を学ぶ」を参照のこと)。
今日のお題はこのビデオ。
Patricia Ryan: Don't insist on English!(日本語字幕付)
スピーカーは長年、中東で働くベテラン英語教師でありながら、経済的機会を求めるあまり、母国語を軽んじて英語にばかり注意を注ぐ傾向に警鐘を鳴らす。言語的多様性の必要性を説く。なかなか考えさせられる内容になっている。なぜかというとこのビデオはいろんな矛盾をはらんでいるからだ。英語ばかりが言語ではない、と主張しつつも、世界中の人が彼女の言葉を理解できるのは、それが英語だからに他ならない。言語的多様性を保持しようというスローガンには誰も表立って反対はしないだろうが、本当にそれが可能だろうか?
彼女のスタンスは、ネイティブスピーカーの生活語としての英語とそれより簡潔なビジネス上の世界共通語としての英語を区別し、各国語と後者の共通語としての英語が共存していくべきだとする David Crystal の立場に近い(洋書だが読みやすい良質の英語でお勧めである)。
- 作者: David Crystal
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2003/07/28
- メディア: ペーパーバック
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「彼女の趣旨には賛成だ。言語的多様性は保持すべき」
「ただ英語は学問やビジネスには重要な言語だから引き続き熱心に学習していかなくては」
「言語的多様性を守るべきというのは簡単だが、現実には少数言語は消滅する運命を変えるのは難しいのでは?」
「かつての欧州の共通語ラテン語が使われなくなったように、世界共通語としての英語の地位も永遠のものではないのでは?」
等々、さまざまな意見が寄せられた。日本のすべての大学生がこれくらい英語が話せるようになったら、どんなにすばらしいだろうか。日本が変わるのは間違いない。
主催者の @Sony_Shimmei さんにお話をうかがった。シンメイさんは東大法学部に所属する学生さんである。
―TEDee を始めたきっかけは?
「米国シアトルのワシントン大学留学を終え帰国したのが2010年3月。せっかく伸びた英語力を維持しようと、時事問題を英語で議論する場を作りました。半年ほど続けたのですが、準備が大変で。夏休みに入ったのをきっかけに中断してしまいました。
冬休みを前にした去年の11月、友達から『またやってくれないか』と頼まれたんですが、資料を用意するのが面倒だなあ、と思って。そこで TED をネタに話をしたらどうだろうか、と思いつきました。始めたのがこの TEDee です」
―始めはどんな感じだったのですか?
「最初は、本郷キャンパスで4人で始めました。名前もついてなくて。最近になってキャッチーな TEDee という名前も付けました」
―現在はどんな感じですか?
「現在は、週に10回ほど、いろんな会場でおこなっています。東京・横浜・京都・神戸・カナダ・シンガポールなどで TEDee の思想に共鳴する方が開催してくださっています。今後、どんどん拠点を増やして行く予定です。週50回くらい行われるところまで持っていきたいですね。首都圏では、東大や早稲田大で行われていますが、絶対相性の良さそうな慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)はまだなんです。協力してくださるかた是非ご連絡ください!」
―TEDee が他の英会話グループと違うのは?
「TOEIC でいうと 800点以上の『英語の読み書きはできるが、話せない』層に焦点を当てていることです。たとえば東大の場合、TOEIC でいい点を取る人たちはたくさんいるんですが、体感では9割は英語でコミュニケーションができないですね。英語テストの点は高くても喋れなかったが TEDee に通い始めてから、めきめきと会話できるようになった、という人を何人も知っています。
正直、いままでの英語教育は、リソースアロケーション(資源配分)が間違っていました。広く薄く多くの人の英語力を伸ばそうとしても効率が悪いんです。TEDee では基礎英語力があるが英語が話せない、だけど英語でのコミュニケーション能力を伸ばしたいと真剣に考えている人たちの背中を押したいですね」
―TEDee は学生専用ですか?
「いえ、学生だけでなく社会人にも門戸を開いています。実際 TEDee @ 渋谷は開催が週末ということもあって、社会人の方に多数お越しいただいています。ただし、TEDee の場では、学生・社会人の違いに関係なく、みな対等の立場で議論したいですね。英語圏がそうであるように、多様性を尊重する雰囲気を作っていきたいです」
―TEDee は帰国子女の方も活用されているとか?
「はい。帰国子女というと世間では英語ペラペラというイメージかもしれませんが、発音は完璧でも案外語彙力が不足している人が多いんです。TED の英語は知的で良質ですから、帰国子女がビジネスの場でも恥ずかしくないきちんとした英語力を育てるには最適です。実際に、帰国子女の方々にもそうやって活用いただいています」
―ソーシャルな仕組みも活用されているとか?
「はい。TEDee Challenge という Facebook コミュニティを作りました。そこで学習の進捗管理をやるんです。つまりチャレンジする人が『今日はこれだけ勉強したよ』とコメントを残していくわけですね。それをメンターが見て『よくやったね』『ここはこうするといいよ』とかコメントを返すわけです。実際、メンターをやってみて分かったんですが、意外と手間がかからないんですね。がっつり指導しなくても、学習者は誰かが自分の学習状況を誰か見てくれていると思うだけで、けっこうやる気が出るんです」
―そろそろご卒業ですが、進路は?
「私は、海外での直接就職を考えています。シンガポールの欧米系企業に就職したいですね。あるいは香港か欧州でもいいです。米国は、法学部新卒の人間が直接就職するのはやや難しいかもしれません」
若い息吹があふれる本格派英語ディスカッショングループ TEDee 。これからの時代、専門性+英語が充実した人生を送るのに必須要件になってくる。究極的に問題になるのは専門性なのだが、英語はそれを世界の広い舞台で実現する上での前提条件(prerequisite)なのだ。若い人たちには、手間をかけることなく、さっさと必要な英語力を習得するという関門を通過して、開かれた大きな世界へ羽ばたいていってほしい。私は微力ながら全力でそんな人たちを応援していきたい。
(後日記)
私も、Skype 上で TEDee 風の英語ディスカッションを行う TED on Skypeという企画を始めた。ご興味がある方は、Facebook グループでメンバー申請してみてほしい。現在のところ毎週日曜日午前10時から開催しています。