2012年4月財務報告

2月・3月に引き続き、今月も私の財政状態を開示する。

私は「パブリック・マン宣言」で情報公開を基本とする旨を宣言し、「私はおカネ儲けが苦手です」で自らを「特定非営利活動個人(NPP, Nonprofit Person)」と規定した。財務報告は、それに伴う自分の活動に関する説明責任(accountability)遂行の一環である。

記帳は複式簿記で行い、企業会計風の発生主義で財務諸表を作成した。

このレベルの詳細な情報を公開している個人はいまのところあまり多くはない。個人の財務情報を公開することのメリット・デメリットを考える上での実験的な試みと考えてほしい。

概要

当期純資産増加 -44,040円
純資産 1,581,532円

今月は44,044円の純資産減少(赤字)。最大の要因は MacBook Air の購入だ(約8万円)。Mac はあきらかに耐久消費財なので、資産計上して減価償却していってもいいのだが、面倒なので(笑)一気に費用化して償却してしまった。

今月は、Skype 相談が盛況を迎え、実にのべ51人の方とお話させていただいた。その収入が11万円にのぼった。この場を借りて改めて感謝したい。

今月から為替差損益を計上している。今月は約2万円の損だった。私は、約70万円ほど外貨を保有しているので、今後も月数万円の為替差損益を計上せざるを得ないかもしれない。本来は、損益を「生活損益」と「全損益」の2つに分ける必要があるかもしれない。

損益計算書

2012年4月1日〜4月30日(単位・円)

収益  
売上(Skype相談) 111,997
売上(アマゾンアソシエイト) 16,783
売上(Google Adsense 4,960
売上(アマゾン VAT 払戻) 896
寄付金収入(献本) 3,600
寄付収入(アマゾンギフト券) 1,100
雑収入 4,208
受取利息 3
合計(A) 143,547
   
費用  
食費光熱費(居候代) 30,000
書籍費 5,517
ネットサービス費 6,500
民間医療保険 5,037
通信費 4,980
外食費 5,918
公的医療保険 2,000
家電費 93,408
支払手数料 500
医療衛生費 1,050
旅行費 5,405
為替差損 21,528
贈与金支出 3,980
雑貨費 1,644
交通費 120
合計(B) 187,587
   
当期純資産増加 -44,040

注釈

  1. 「売上(Skype相談)」のべ51人(!)の相談者があった。
  2. 「寄付金収入(献本)」献本は2冊。
  3. 「食費光熱費(居候代)」母の家に住んでいるので、食費+光熱費だけ負担している。部屋代は免除してもらっている。
  4. 「書籍費」寄付金収入(献本)によって大部分を賄っている。
  5. 「ネットサービス費」内訳は、サーバーホスティングSkype・MG(X)・ニコニコ動画はてな等。
  6. 「通信費」内訳は、WiMax(3880円)とドコモ(1100円)。
  7. 「外食費」近所のマクドナルドでコーヒーを飲む・コンビニで菓子パンを買う等。
  8. 「民間医療保険料」アフラックがん保険医療保険
  9. 「公的医療保険国民健康保険料。国民年金保険料は申請により免除されている。
  10. 旅行費は、4月24日に鎌倉・江ノ島を訪れた分。

貸借対照表

2012年4月30日現在(単位・円)

資産の部  
現金預金 1,532,494
売掛金 53,190
航空券 72,210
合計 1,657,894
   
負債の部  
短期借入金(クレカ) 74,362
未払費用 2,000
合計(A) 76,362
   
純資産の部  
期首純資産 1,625,572
当期純資産増加 -44,040
合計(B) 1,581,532
   
負債・純資産合計(A+B) 1,657,894

注釈

  1. 「現金預金」私の100%所有会社「株式会社ソフトカルチャー」の現金預金も連結してここに報告している。PayPal もここに含む。外貨(米ドル・香港ドル)を含む。
  2. 「航空券」は、5月下旬から6月中旬にベトナム・フィリピンを訪れる航空券。費用と収益を対応させるため資産計上し、実際に飛行機に乗った段階で償却する。
  3. 売掛金」未回収のアフィリエイト(アマゾンアソシエイト・Google Adsense)代金等。
  4. 「短期借入金(クレカ)」これから支払日が到来する分のクレジットカード利用残高。
  5. 「資産合計」=「負債・純資産合計」であることを確認してほしい。

感想

諸事情で家族の購入した第3世代 iPad(約4万円)を当面、私が占有して使用することにすることとなった。これを贈与金収入として計上すべきか悩んだが、家族間の日常的な小額の贈与は会計報告になじまないと考え、簿外にした。

私がパブリック・マン宣言をしたのが今年の2月15日。約3ヶ月が経過した。

パブリック・マン宣言 - elm200 のノマドで行こう!

その後、「パブリック・マン」という言葉が一人歩きして、私はすっかりキャラクター化され、私を「パブさん」と呼ぶ人まで現れた。別に他人が私をなんと呼ぼうと構わないが、固定化されて見られるのはやや窮屈な感じはする。

私は「パブリック・マン」というジェフ・ジャービスの言葉を、「情報公開をデフォルトとする人間」という意味で使っただけで、その内容については必ずしも規定しなかった。だが、私はたまたま同じエントリーで自分の財務状況について公開したので、あたかも「パブリック=財務状況の公開」という認識が一部であるようだが、それは正しくない。私の人となりをみなさんに理解していただく範囲において情報を公開しているにすぎないのであって、その趣旨から外れれば、どんな情報もふたたびに非公開にすることもありうる。

パブリック 開かれたネットの価値を最大化せよ

パブリック 開かれたネットの価値を最大化せよ

私自身は、何を公開しても構わないだが、私に関わる人たち(特に家族)に負担を掛けてしまうのは忍びない。結局、私もまた、非公開がデフォルトの2012年を生きているのだ。私の周囲の人たちに私の信条を押しつけることはできないし、そんなことをするつもりもない。

私が、尊敬するネット人の一人に梅田望夫氏がいる。かれは2006年「ウェブ進化論」で名を馳せた人物だ。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

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彼の行った生活実験に、自分の言論活動に寄せられたネット上のフィードバックにすべて目を通す、というものがあった。彼は、宣言した通りまじめに相当きちんとやったようだ。彼の主張は、今日のネットを予言する先見性に満ちたものだったが、人気を博す者の常として多くの批判も同時に寄せられた。その結果、ある時点で心が折れてしまったようで、ばったりネット活動をやめてしまった。

これは、誰にとっても残念な結果だった。私は、これを「ネット燃え尽き症候群」と呼ぶことにしたい。

そもそも私が財務状況を公開したのは「勘違いしないでね、私はこれしかカネがないよ」とぶっちゃけることによって、ある種のハイプ(根拠のない人気)をつぶそうとしたのだが、かえってさらに人気を博すことになってしまったのは、まったくの誤算だった(笑)。

意外な「パブリックマン」人気のなかで、私も生活実験を続けていかなければならない義務感のようなものを感じるようになった。義務感というのは、それがなんであれ、つまらないものだ。私自身、情報公開を続けていくことはやぶさかではないが、単に「世間」の期待に応えるためにやるというのは退屈だ。私はネット上での一貫性にこだわるあまり、疲れきってしまいネットから全面的に撤退する「ネット燃え尽き症候群」はなんとしても避けたい(ニコニコ動画の人気者たちも突然引退してしまう人が多いのだが、彼らも同じ症状と思われる)。とにかく無理せず楽しくやるのが一番である。

私にとってインターネットはかけがえのない大切な場所だ。私は末永くここでいろんな人たちと関わっていきたい。そのため場合によってはこのような財務報告をやめる可能性も十分あることをご承知いただきたい。いろんな面を検討したうえで、次回も財務報告をやるかどうか、やるとするならば、どういう形にするか、考えることにしたい。