サイゴン到着

今日も、田舎道を延々と走り続けるハードなバスの旅。朝、ダラットを出発して8時間後、ホーチミンシティ(サイゴン)に到着するやいなや、雷とともに滝のような雨に襲われる。バスは、ファングーラオ通りの安宿街で泊まり、客を吐き出した。今日泊まったホテルは、サイゴン・コンフォート・ホテル。無線 LAN でインターネットを使いたいがためだけに、このホテルを選んだ。しかし一泊25ドルですよ。いままでの田舎町では、7ドル・8ドルでいいホテルに泊まれたのに。さすがサイゴンは大都会である。部屋はそれなりに快適だが、遊び心はとくになく、機能的なビジネスホテルという感じ。それでも、トイレの電球が壊れているあたり、ベトナムらしくご愛嬌である。

サイゴンは、ベトナム随一の経済都市である。それはバスに乗っていても、それははっきり分かった。ハノイでは見ることのなかった大工場や大規模な港湾施設、パワーシャベルのような重機の列、片道3車線の道路を行き交うトラックの群れなどを目撃したからである。ベトナムでビジネスをやろうとするなら、サイゴンを訪れないわけにはいかないのだ。

ところで、私はこの都市を、時にはサイゴン、時にはホーチミンシティと呼んでいるが、基本的には同じ意味で使っている。ここに来て思ったが、この都市の活力の源は、社会主義のそれではなく、資本主義のもので、そういう意味では、サイゴンと呼んだほうがしっくりくる。ホーチミンシティという名は、建国の父ホーチミンから来ており、政治的なにおいがするからである。(もっとも、ホーチミンという人物自体は、全ベトナム人から敬愛されているのは事実らしいけれども)

ただ、ベトナム人自身もよくサイゴンという名前を使う。このときには、実際上の区別があり、行政区画として市の名前がホーチミンで、その中心部がサイゴンということらしい。私が連想したのは、九州の福岡と博多の関係だ。福岡=ホーチミン、博多=サイゴンとでも考えればちょうどよいような気がする。

東京を出発したのが9月22日。今日が10月20日だから、約1ヶ月が経過した。途中、ソウルから杭州までは飛行機に乗ってしまったが、それ以外は全部、船・列車・バスで踏破した。今日勘定してみたのだが、14回、交通機関を乗り換えてここまで来たことになる。おそらく距離にして5000キロ以上。思えば遠くに来たものだ。

旅行は今日で終わり。明日から、本当の意味でベトナム生活のスタートである。