よい欲望と悪い欲望


商売の基本は、お客さんの欲望を満たすことにあるはずだ。
(「欲望」という言葉はギラギラした印象を与えるので、普通はニーズとか願望とか言い換えているけれど、同じことだ)
欲望があり、それを満たしてあげる。そうすると、お客さんは満足して喜んでお金を払ってくれる。
ただそれだけの非常にシンプルな原則。


僕は、商売が苦手だと思っているのは、おそらく、欲望に対して善悪判断をもってしまうからだろう。本当の商売人は、お客が求めるならば何でも売るのではないだろうか?ポルノグッズを買うのは悪で、親孝行のプレゼントを買うのは善とか、そういう価値判断を差しはさまず、忠実にお客の欲望を満たすことに専念するのだ。それが、そしてそれだけが、商売人の仕事なのだろう。


「Xを求めるのはよいことだ」「Yを求めるのは悪いことだ」という気持ちの動きはあくまでも自分の内部で起こっていることで、それを求めるお客さんには、何の関係もない。そして、僕の認識力が有限である以上、自分が間違っている可能性は十分ある。お客さんは、お客さんなりのさまざまな経緯を経て、現在商品XやYを求めているのだ。その気持ちを最大限尊重してあげるべきではないだろうか?


昔、僕がこの IT 業界で駆け出しだったころ、「こんなソフトウェアの要求は本当に馬鹿げている」などとよく思ったものだ。いまでも、ときどき奇妙な要求に出会うけれども、いまは昔ほど一面的には考えない。そういう考えもあるかもな、なんて思ったりする。正解は一つじゃないんだな、結局。