meet-me がうまくいかない5つの理由

Second Life に対抗して、日本発の 3D 仮想空間を目指すmeet-me。しかし、始まる前から、どうにもうまく行きそうにない予感。
理由を5つ挙げてみる。

1. ユーザがコンテンツを作ることは期待されていない

東京を再現した3D仮想世界、トランスコスモスや産経新聞らの合弁会社が年内オープン

meet-me開発を担当するフロムソフトの神直利社長は「Second Lifeのような“オープンソース”は日本人には向いていない」と指摘。建物や空間をあらかじめ作っておくことでユーザーが何をしていいか迷わない作りにするほか、ゲーム内イベントやアトラクションもある程度作っておき、受け身のユーザーも飽きずに楽しめるようにする予定だ。

いったい何を楽しむのか不明。Second Life を成長させたのは、コンテンツの創造に夢中になった一部の熱狂的なユーザたちだったはず。受身のユーザーが何人いたところで、何がうまれるのだろうか?

ただ、東京23区の面積は約621平方キロ。その中には170万あまりの建物が存在するという。そのような空間を仮想的に作り出す試みは、「開発にとって地獄」とフロム・ソフトウェア代表取締役社長の神直利氏は笑う。

Second Life が豊かで多様な世界を持ちえたのは、ユーザーたちがコンテンツを作ったからである。

ランドマーク的な建物は制作しているが、その間を埋めるものはユーザーに自由に作ってもらうという。

ユーザーが作るものはあくまでも隙間を埋めるものであり、メインなコンテンツは運営者が作るよ、ということなのだ。Web 1.0 的すぎ。Web 2.0 の「ユーザによるコンテンツ生成を支援するプラットフォームに徹する」という考え方がまったく理解されていない。コンセプト段階で時代遅れ。まあ Web 1.0 で何で悪いんだと言われればそれまでだけど。

2. 仮想通貨が日本円に換金できない

Second Life Watch! 【セカンドライフ ウォッチ】

仮想世界で流通する通貨の販売も検討するが、仮想通貨の現金への換金は「現行の法制度上黒に近いグレーと考えられるため」(森山社長)当面は行わない。

日本の法制度の保守性が、イノベーションを妨げている好例。またベンチャーにも法律を破ってでも理想に邁進しようというガッツがない。(日本でそれができるのは 2chひろゆきぐらいだろう)仮想通貨が円やドルへ換金できない世界で、だれがまじめになってビジネスをやるだろうか?人為的にゴールを作ってゲームにすれば、ポイント稼ぎに精を出す人もいるかもしれないが。

3. アダルトコンテンツがない

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性的なコンテンツやカジノ、公序良俗に反するようなコンテンツは排除する。「エロやギャンブルはやらない。単純にユーザーを集めるためだけにそういったものを入れるのはいやだし、そんな場を作っても意味がないと思う」(ココアの森山社長)

私は個人的には Second Life のアダルトコンテンツには興味がないが、はじめからこうやって敵対視するのはいかがなものか。それに Second Life ではエロの空間(島?)はもともと同好の士が集まって、作られたんじゃなかったかな?「単純にユーザーを集めるためだけに、云々」というくだりには、アダルトコンテンツもユーザによって作られたという経緯に対する理解が乏しく、むしろ金儲けの下心が透けて見えるようである。ユーザーの人間性を清濁合わせて、まるごと飲み込もうという覚悟がない。(そう考えるとやはり 2ch は偉大なサービスである)

4. 運営者が合弁企業

今回のプロジェクトは、トランスコスモスフロム・ソフトウェア産経新聞の3社の合弁事業だそうである。Second Life を経営するリンデンラボが、仮想空間という夢を追い求める技術者によって立ち上げられたことと対照的である。クリエイティブなアイディアは一人の天才の頭脳に宿るのであり、合弁企業の政治的な会議からはまず生まれないだろう。

5. 運営者がユーザーを信用していない

一言でいうと、meet-me はユーザを信用していないのである。子ども扱いしているのである。

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ユーザーが自由に家を建てたりアイテムを作ったりもできるが、インタフェースはSecond Lifeより「親切に」(神社長)する予定だ。Second Lifeでは、家もアイテムも同じパーツを変形したり、拡大・縮小するなどして組み合わせて作るため、制作には技術と慣れが必要。meet-meではアイテムごとに専用パーツやインタフェースを提供するなどし、初心者でも簡単に作成できるよう配慮する。

だから何から何まで面倒をみて、遊ばせて、小金を巻き上げようということなのだ。話題にはなるだろうし、登録するユーザーは大勢いるかもしれないが、主体的な取り組みが期待されないサービスで、どれくらいの割合の人々が熱心なリピーターになるのだろうか?

批判的に見てきたが、Second Life に対抗しようとせず、バーチャルテーマパークとして割り切ればそれなりの活路は見出せるかもしれない。というか、そもそもこの企画を作った人たちが Second Life = テーマパークと誤解していたのかもしれない。Second Life は運営者のリンデンラボ社が裏方に徹し、ユーザーたちがコンテンツ作りの主役として活躍し、これから何が起こるかわからない、つねに進化しつつある世界を作り出した。それが一番の魅力であるだが。Web 2.0 的サービスでは、サービス運営者がユーザーを信じる「信頼力」が必須なのだが、meet-me の運営者たちには、それが致命的に欠けている。

参考リンク

現実よりツマらない仮想現実 がやれやれという嘆息とともに meet-me に鋭いツッコミを入れている。一読の価値あり。