日本の経済の現状に対する個人的な認識(その2)
2月11日のエントリ、日本の経済の現状に対する個人的な認識の続編。
私の危機意識は、
(1) 日本の製造業の先行きの暗さ
(2) 新しい産業が生まれないこと
(3) 地方の先行きの暗さ
から発生しているようだ。各々について述べよう。
のうち (1) だけを述べた。今日は(2) について話そう。
(2) については、東証一部上場の時価総額上位30社の顔ぶれがこの20年でほとんどかわっていない、という話を聞いたことがある(ソースがどうしても探し出せないが)。2007年の資料によれば、上位5位は、トヨタ自動車、三菱UFJ、NTT、任天堂、キヤノンだそうだ。おそらく任天堂を除けば、20年前も巨大企業であった会社ばかりだ。(まあ任天堂もよく名前は知られていたけれども)20年前には存在しなかった会社で時価総額上位30位にランクインしている会社はほとんどない。(大企業同士の合併により名前が変わった会社は除く)「底の浅い日本のIT企業??時価総額1兆円以上はわずか9社」という話もあるし、そうしているうちに、「時価総額 中国、日本抜く」なんていう話になっているらしい。
一方、ちょっと思い浮かべるだけでもこの20年以内に生まれて、いまや日本のたいていの大企業より大きくなってしまったアメリカのネット企業はキラ星のように存在する。(グーグル・アマゾン・ヤフー等)
経済というのは、成長するのが基本なのだ。新しい企業や産業がうまれずに現状維持だとしたら、それは実質的に後退である。
それよりもさらに嫌気が差すのは、日本のエスタブリッシュメントたちの危機感のなさである。次の対談を見てほしい。経済同友会代表幹事の桜井正光氏と東大経済学部教授の伊藤元重氏が話している。*1
伊藤 これから成長していく産業の話に戻りますが、情報通信分野がこれから世界的に重要になるのは間違いないと思いますし、そこで数々のビジネスチャンスが生まれるでしょう。しかし、あえて伺いたい。この分野でいま日本は負けていませんか(笑)。
桜井 そうですね。率直にいうと負けていますかね(笑)。
伊藤 自動車やエレクトロニクスが日本産業のなかで果たしている役割を、将来、情報産業が担っていけると期待できますか。
桜井 期待できなければ困ります(笑)。
次世代の主力産業に出遅れても、この悠長さなのである。私は、プログラマとして日本の重層下請構造のシステムインテグレータ業界がどれほど腐っていて、効率が悪く、世界的な競争力がないかよく知っている。これはとても(笑)で済まされない酷さなのだ。上の対談を読んでみて私が感じたのは、この桜井氏は、おそらく「情報通信分野」なんていう「チャラチャラした」産業で勝たなくても、日本は従来のものづくりで十分世界のなかでやっていけると信じているにちがいないのだ。おそらく、いまこの国の中枢に座っているほとんどの人たちは本音ではそう信じているにちがいない。(仮に、うすうすヤバイとおもっていても、それはいままでやってきたことの責任を追及されたり、非難されたり、既得権を失うことになったりするだけで、なんら個人的な利益にならないがために、そう信じるふりをすることに決め込んでいるのかもしれない)
やれやれ・・・。マジに日本を抜け出したくなってきた。そうだとしても、今回は(私は1999年にも逃げ出している)もうちょっとこの日本の現実をきちんと理解し、整理してから行動を起こしたいのだ。ただ、それだけのためにブログエントリを書き続けている・・・。
*1:私事になるが、伊藤氏は私の大学時代のゼミの指導教官であった。伊藤氏はかなり頭の柔軟なほうではあるが、それでもエスタブリッシュメントの世界に四六時中首を突っ込んでいれば・・・