提案すること・実行すること・コミットすること

自分自身に欠けているものが何であるか、自分ではよくわかっているつもりだ。それは、この社会の中で何かを新しく作り出していくことだ。新しいことを作り出すとは、自分の考えをまとめ、わかりやすく他者に説明を行い、合意を得て、実行し、それが成功するまで続けることだ。私がどんなに精緻なコンピュータプログラムを書いても、仕事に完全に満足できなかったのは、社会に対して何事かを提案し、新しいものを作り出すという部分に欠けていたからだ。

ベトナムで会社を作るのは、じつは、社会の中で新しく何かを作り出していく行為のひとつにすぎない。会社を作ること自体にこだわっているわけではない。自分で何かを提案し、仲間を募り、そのプロジェクトにコミットする、ということさえできればいいのかもしれない。

私は、物心ついたころから、やや社会性にかける子供であった。周りの子供たちと比べて、私は何か違うような気がいつもしていた。彼らの望むものは私はほしくない。私の望むものは彼らがほしくない。他の子供に働きかけて、何かを一緒にやるということが難しかった。

小学校から高校までの社会性を培う時期に、私はこの種の社会性を育てることができなかったようだ。そして、いまもなお、私は社会とのかかわり方に悩みを持ち続けている。

私は、日本社会に対して深い不満を抱いているようだが、実際には自分の力でそのごく小さな部分でも現実にそれを変化させることができれば、この心の乾きは満たされるのかもしれない。そのために必要な行動は、想像しているよりずっと小さいのかもしれない。