Sony VAIO type P をみて思うこと

Sony VAIO Type Pは、発表されたばかりの超小型軽量ノートパソコンである。たしかにメディアのレポートを見る限り、久しぶりに日本のメーカーから面白い商品が出てきた感じはする。ボディは245(W)×120(D)×19.8(H)mmとコンパクト。重量は630グラム程度。デザインもこだわりが貫かれて美しい。

機能的な面で難点を挙げるとすれば、まずは Windows Vista が搭載されていること。できれば XP にしてほしかった。この小ささで解像度が 1600 x 768 というのは、ちょっと行きすぎではないか。字がキチンと読めるかどうか。

最大の難点は、10万円前後と予想される店頭価格である。今年は、ミニノートの低価格化がますます進行すると思われる。私が現在使っている ASUS EeePC 1000H は、現在5万円くらいで売られている。その2倍を出しても買いたいと思う人がどれくらいいるかが問題だ。

とはいえ、久しぶりにモノづくりにこだわりのあるソニーらしい製品に仕上がっているといえるだろう。いまのミニノートブームへのソニー的な回答というわけだろう。

ただ気になるのは、いかにも日本的なチマチマ感である。解体してみると、実に巧妙に部品群が配線されているという。ということは、逆に言うと賃金の高い日本国内でしか作れない商品であり、価格競争力に大きな制約があるということだ。ここらへん、同じ高く売るにしても、製造は中国の請負会社に丸投げの Apple とは大きく違う点だ。

マーケティングもやはり Apple ほどうまくない。これだけ売れ筋の商品の価格帯から外れているとすると、ハイプを作りだし、ブランドイメージを高める方向で行くしかないのではないか。電気製品ではなく、高級ハンドバックを売るようなマーケティングが必要な気がする。

私の予想では、type P は国内では、一部のマニアには受けるものの、一般ユーザーにはあまり普及しない気がする。外国で売れるかというと、やはり価格がネックになってあまり売れない気がする。実に面白いマシンではあるのだが。

もし、ソニーが中国人労働者を叱咤激励して、この製品を中国で生産し、世界に売るつもりで6万円台の価格で出してくれば、さすが日本のメーカーはすごいということになったような気がする。そうしていたら、私はソニーを見直していただろう。実はいまのソニーに一番欠けているのは、技術力ではなく、経営上の戦略性なのかもしれない。

P.S.
その後ネットでのユーザーレポートによると「もっさりしている」「文字が小さすぎて見えない」という声があがっているらしい。やっぱりなあ、と感じた。もし、機体を小さくすることにこだわりすぎて、ユーザー・エクスピリエンスへ配慮を怠ったとしたら、典型的な日本メーカー的な病癖としかいいようがない。台湾製EeePC を使って思うのだが、これは安いだけの PC ではない。ユーザーの立場に立った配慮が随所にあってなかなか気持ちいいのである。type P の今後をしばらく見守ることにしよう。