クアラルンプール訪問

昨日、シンガポールから 格安航空会社のエア・アジア(Air Asia)でお隣の国マレーシアの首都クアラルンプールにやってきた。エア・アジアはクアラルンプールを本拠地にしている。エア・アジアの LCCT(格安航空会社用ターミナル)は、噂通り、「掘っ立て小屋」感に満ち溢れるチープな建物だった。お世辞にもかっこいいとはいえないターミナルだが、エア・アジアのコスト削減への執念が伝わってくるようで、実にあっぱれだった。公的資金の助けなしに生きていけない日本航空にはぜひエア・アジアの爪の垢を飲んでもらいたい。

LCCT からクアラルンプール中心部の KL Sentral 駅まで、バスに乗った。隣の席には中国系マレーシア人の初老の男性が乗っていて、私たちはしばらく話をした。彼は、非常に洗練された英語を話す。だが、イギリス人のように、とまではいえない。母国語は?とたずねると、彼は微妙な表情を見せた。「どういう意味で?(what do you mean by that?)」と彼は私に聞き返した。彼が言うには、両親も中国系だが、英語話者で、英語と中国語の完全なバイリンガルということらしい。ただし、中国語といっても、標準中国語(普通話)ではなく、ある地方の方言であるので、中国人同士でも意思疎通に問題がある。そこで、彼は基本的に英語を話して生活しているらしい。「マレーシアは昔は英語で大学教育をしていたんだが、あるときからマレー語化を推進したため、教育水準が大幅に落ちてしまったよ。マレー語ではよい教科書がないからね」と彼は無念そうに言った。マレー語とインドネシア語はほぼ同じ言語でしょう、インドネシアに助けを求めることはできなかったのですか?と私がたずねると、彼はやれやれという風に苦笑して「政治的にそれは難しいんだよ」と言った。インドネシアシンガポール・マレーシア、これらの国々は似たもの同士なのに、なかなか政治的に微妙な関係にあるらしい。近親憎悪なのかもしれないね。

クアラルンプールは、想像以上に近代的な都市だった。高速道路は美しく舗装され、東京のそれと何も変わらない。中心部には高層ビルが林立している。街の持つ色合いがどこかしらインドネシアの首都ジャカルタに似ている。同じマレー系の民族が作った都市だからか、それともイスラム教の影響なのか。

今日は、KLCC 駅のそばにあるツインタワーを訪ねた。これはマレーシアの石油会社ペトロナスの本社ビルらしい。高さ452mの88階建てとのこと。上空170メートルにある、二つのビルを連結する橋スカイブリッジに登ってみた。クアラルンプールは、緑の多い美しい都市であることが、ここからも確認できた。

しかし、正直いってクアラルンプールは興味深い都市とはいえない。シンガポールも退屈だと思ったが、クアラルンプールはそれ以上に退屈だ。ここは働くためだけの街。物価もそれなりに高い。日本の半分程度だと思えばいい(イスラム教の影響か、ビールは特に高い。日本と同じかむしろ高いくらいだ)。これは、東南アジアでは高い方だ。バックパッカーが寄り付かない理由が理解できた。