横浜市会はなぜユーストリーム中継しないのか?

横浜市会(市議会)にでかけて、政策・総務・財政委員会を「モニター傍聴」した。

委員会は、委員(議員)11名+役人2名という少人数構成なので、案外活発な議論があった。議題の背景をよく知っていればけっこう楽しめるだろう。今日の議題の一つは、横浜市立大学の理事会の人事に関する請願について。ドロドロの人事抗争で、内部者が議会に請願書を提出したらしい。ちょっとメロドラマっぽくて面白い感じ。総務局長が平身低頭「ご説明」をし、委員が何かお説教している。

ただあまりに話が長いので最初の2時間くらいを聞いて中座した。議員さんたちも長時間、議論に集中するのはさぞ大変だろうとやや同情した。

さっき「モニター傍聴」と言った。傍聴といっても委員会の部屋には直接入れず、別室でモニターを通じて傍聴することになる。TV モニターの下に「モニターの撮影又は録音はお断りします。携帯電話類及びパソコンなどの情報通信機器の電源は切って入室してください」という不思議な注意書きがぶら下がっている。市会の議事に著作権でも存在するのか?ツィッターである方が教えてくれたところによると「市会での発言は後で『取消』『訂正』して公式議事録になる。無修正のまま発言が残ると議会運営に支障出るから」と彼らは主張しているらしい。だが依然として理解に苦しむ。

横浜市会のウェブサイトを見ると、本会議は生中継するし、過去の委員会の質疑は動画で公開しているようだ。しかし、議会で一番実質的な議論が行われる委員会で生放送が行われない理由がよく理解できない。特別なシステムを発注しなくても、いまはユーストリーム(Ust)で誰でも無料で簡単に生中継が行えるのに、なぜやらないのだろうか。横浜市にとって余計にかかる費用はほとんどないはずだ。

政策・総務・財政委員会は地味なゆえ、あまり人気がなかったようだ。一方で、同時に開催されていた「こども青少年・教育委員会」のほうは傍聴者が多く盛況だった。女性の姿も目立った。子育てに忙しい若い母親たちの中には、委員会の質疑に関心を抱いていても、物理的に足を運べない人たちもいるだろう。そういう人たちのためにも Ust 中継をすべきだろう。横浜市政に関心を抱く人たちが地理的時間的制約を乗り越えて議論に参加できるのは革命的だ。Ust は世界を変える潜在力を持っている。

なぜ横浜市会が委員会の Ust 中継をしていない(許していない)のか?圧倒的多数を占める高齢の議員たちのインターネットへの認識が不足しているからだろう。インターネットは技術であると同時に文化である。いま生まれつつある新しい世界と直結している。インターネットに対する理解なしに、21世紀は理解できないのだが、それに気づかない高齢者(とくに地位の高い人たち)が多すぎる。このままでは日本はますます間違った方向に進んでしまう。

PCはかつて子供のおもちゃだった。いまの高齢者は、PCの黎明期に30代40代の働きざかりでその印象を引きずっている。だが、いまは iPad のような使い勝手のよい機器も出て来ている。高齢者に IT 技術を啓蒙することはできないだろうか。

今回の委員会質疑は市民からの請願の採択の可否だった。それにも関わらず請願の全文がインターネット上で公開されていない。別に直接民主制にする必要もないかもしれないが、少なくとも市会の議論に関連んする全資料は、インターネットでリアルタイムに公開すべきだろう。

役所はだいぶデジタル形式で情報を提供するようになったが、いまだに紙をスキャンしただけのような PDF 形式が多い。数値データは、CSV / データベースファイル / Web API で直接提供すべきだろう。あの古くささは、役所が古いのか、相談相手の IT ゼネコンが古いのか。たぶん両方だろう。

今日、見た委員さんの中では、豊田有希議員(みんな・港北区)が一番まともそうだった。36歳のイケメンで、女性有権者が騒ぎそうだ。喋り方がもっとも普通で好感が持てた。彼はウェブ制作関係の職歴もあり、Ust にも理解があるかもしれない。彼に市会 Ust 中継の請願書でも提出してみようか。

もういいかげん日本の指導層は反インターネット的な態度を改めるべきだ。そのためには政治的影響力の強い高齢者が IT に慣れてもらう必要がある(難しい課題だが…)さもなければ現在グローバル化と同時進行するインターネットを基盤とする情報革命から取り残され、日本は先進国の地位から転げ落ちることになるだろう。