川崎・浮島太陽光発電所を見学しました

川崎市にあるメガソーラー、東京電力・浮島太陽光発電所を見学してきた。東京湾に面した臨海部にある。

ここは、ごみの焼却灰の埋め立て地だった。こういう土地は、雨水による自然浄化のため、20年間、通常の建物は建てられないらしい。そこで川崎市が無償で土地を貸して、東京電力太陽光発電所を建設した。去年2011年の8月に運転開始。

出力は7MWp(7000キロワット)。家庭の太陽光パネルが通常4kWp 程度であるから、7000/4 = 1750戸分。だいたい2000戸の家庭の電力を賄える電力を作り出すことが可能だ。

詳しくはこのページを見てほしい。

家電-コラム-藤本健のソーラーリポート-東京湾にメガソーラー発電所ができる!

隣にある資源化施設(ゴミ処理場)の屋上から見た眺め。今日はよい天気で東京湾の対岸に千葉県の臨海部の建物をよく望むことができた。羽田空港からは、真っ青の空を背景に飛行機が次々に空へ飛び立っていく。

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これで7MWp なのか。11haの敷地。案外小さく見える。上から見た印象は特殊なビニールハウスという感じだった。

発電所施設内に入り、太陽光パネルから3メートルくらいの距離から。

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果てしないソーラーパネルの海という形容がふさわしい。ここで何の音もなく黙々と電気が作られている。何と美しい発電方法だろうか。私が訪れたのは午後2時前後で、気温25度程度。天気は快晴で、太陽光発電には最高の環境だった。おそらくソーラーパネルたちはフル稼働で電気を作っていただろう。その静かな佇まいからは、そんな姿は少しも伺えなかった。

太陽光発電が嫌いな人たちは、このあまりのさりげなさが気に食わないのだろう。火力にしろ原子力にしろ、巨大な機械がうなり音を上げる「工業」の匂いがした。いわば「肉食系」の発電手段だ。一方で太陽光発電は、太陽の光が射すかぎり、黙々と発電していく。静かで受け身の態度。「草食系」というか、実際植物そのものだ。植物も太陽光をエネルギー源にしているのだから。

全く偶然なのだが、今日5月5日、泊原発3号機が定期検査に入り、42年ぶりに日本の原発が全部止まる。そのため日本テレビバンキシャという番組の記者が浮島太陽光発電所の取材に来ていた。私も少し取材を受けた。明日の夕方6時から放映らしい。

この浮島太陽光発電所の見学ツアーを実施しているのは、かわさきエコ暮らし未来館川崎市の浮島処理センターの内部にあり、川崎市の施設ということになっているのだが、ややいわく付きである。実際にこの見学施設を運営しているのは、株式会社キャリアライズという人材派遣会社なのだ。非常に興味深いことに、この会社は東京電力グループに属する企業なのである。

係員たちは自分たちが太陽光発電所の案内をしているにもかかわらず「太陽光発電所は、広大な敷地が必要なわりに発電量が少ないですから、他の電源と併用し続ける必要があります」などと発言し、違和感を覚えていたのだが、そういうことだったのか。説明も残念ながら、コンビニ店員的なマニュアル臭さを拭えなかった。係員たちは、若い人たちで、彼らなりに張り切って働いていた。政治的なバイアスだけで見てしまうのは気の毒だとは思うが、この施設を訪問する人たちには、こういう背景があることは知っておいてほしい。

去年3月の原発事故以来、エネルギーは完全に政治問題になってしまった。風力・太陽光などの再生可能エネルギーが期待を集める一方で、「エネルギーが低密度すぎて、大量のエネルギーを生産するには不向き」という批判は根強い。再生可能エネルギーが、低密度なのは事実だが、実用的ではないという批判は的外れだ。

それは、エネルギーは集中的に作られるべきという古い20世紀的先入観に基づいている。だが、21世紀は自律分散の時代なのだ。経済的な手段で必要な場所で必要なだけのエネルギーを作りうるなら、どうして、集中的な電源が必要だろうか?再生可能エネルギーは新しい時代精神そのものなのだ。

再生可能エネルギー大国のドイツでは、風力・太陽力等が原子力より多くの電気を作り出している。彼らは2020年までに全電力の35%を再生可能エネルギー由来にし、2022年までに原発を全廃止する計画だ。ドイツ人はほとんど宗教的とさえ言える真摯さで、再生可能エネルギー中心の社会を建設しようと本気で取り組んでいる。われわれ日本人も彼らを見習うべきだ、と個人的には考えている。

浮島太陽光発電所は、川崎駅から浮島バスターミナル行きのバスに乗り終点で降りてすぐだ。高速の浮島ジャンクションがあるので、車で行くのも便利な場所にある。再生可能エネルギーに賛同する人も懐疑的な人も、一度、実際自分の目で見てみるといいのではないだろうか。