日本的な働き方を乗り越える

日本企業とつき合う問題点

自分のこれからの仕事の方向性について考えている。たぶん一番堅実な方向性は、自分が再びソフトウェアエンジニアに戻り、日本のお客さんから受託開発の仕事を請けて働くことだ。私にはこの点、実績があるし、大きな困難なくやれるであろう。

ただ、問題点もある。日本のお客さんの仕事を請けるというのは、なかなか難しい問題点を含んでいる。日本的な仕事の進め方は、仕様の策定までに時間がかかり、その後も仕様変更の手戻りが頻繁に発生する。そのコストの多くを受注側が負担するのが通例になっている。こういう働き方をするのは基本的に日本しかない。

シャープの経営が傾いている。その他も、パナソニックソニーエルピーダルネサスなど、日本企業の経営の行き詰まりが次々と明らかになっている。私は、非常に深いところで日本的な経営や働き方の持続可能性に疑問を持っている。何が正確な原因かは分からない。だが、「擦り合わせ」に代表されるような日本的な経営手法が、ある時点から有効性を失ってしまったのではないか。

参考:
ソニーはなぜ失敗したのか?米国屈指の知日派経営者が日本企業に提言!――日本NCR元会長・米国NCR元社長(CEO)ウィリアム・アンダーソン氏インタビュー

日本半導体の凋落原因を探る(前)|現場の第一人者に聞く 「日の丸半導体」復活に向けての処方箋|ダイヤモンド・オンライン

日本の産業界では、比較的古いタイプの精密機械・一般機械などが健闘する一方で、電子部品・情報通信の落ち込みが激しい。

参考:交易条件で見えてくる日本産業の将来 : 富士通総研

落ち込みの激しい産業には、デジタル化が進行しているという特徴がある。ソフトウェアが重要な役割を果たしている分野だ。それが軒並み不調ということは、日本企業がソフトウェア作りを苦手にしている可能性を示唆している。

語弊を怖れずにいえば、いまやこうした日本企業は「負け組」になっている。その負け組の仕事のやり方に順応することに将来性があるのだろうか。私が日本企業とつき合うのをためらわせるのはそういう部分だ。

日本人ソフトウェアエンジニアが世界に出る難しさ

できれば、世界中の企業と対等に付き合いたい。これは、私だけではなく、一部の日本人たちの間で芽生えつつある意識ではないか。

だが、これもまたなかなか難しい。特にソフトウェアを扱う人間にとっては。なぜかというと、ソフトウェア開発には、大量の言語的意思疎通を必要とする。それゆえ、ソフトウェア開発は言語の壁を越えるのが難しい。これがモノを売るのであればはるかに簡単であろう。

一部の恵まれた日本人技術者たちは、シリコンバレーで職を見つけることができるだろう。技術力が高く、英語力のある人たちには、有望な選択肢だ。

ただし、そういうことができる人たちはごく一握りだ。日本に居ながらにして、海外にソフトウェアを売ることもできなくはない。だが、そこで直面するのは、新興国の人々との激しい競争だ。

たとえば oDesk では、世界中のフリーランサーたちを探すことができる。インド・バングラディッシュ等の南アジアの優秀なプログラマーたちが多数登録をしている。彼らは時給10 USD 〜15 USD 程度の安値で働いてくれる。とてもではないが、たいていの日本人ソフトウェア技術者には対抗できない。

それでは、私はどうしても日本だけを向いて仕事をする気になれないのだ…。毎年、椅子が減って行く椅子取りゲームをしているような悲しさがあるからである。

英語圏のオンライン学習の可能性

…というわけで私がいま突破口を見いだそうとして頑張っているのがCoursera

Coursera は、スタンフォード大学の元教授が立ち上げたオンライン大学サービスである。プリンストン大学スタンフォード大学ミシガン大学ペンシルバニア大学など米国の有名大学の教授がビデオ講義を行い、宿題も課され、オンラインフォーラムで議論もできる。世界中の誰でも無料で参加できるので、一つのコースに数万人が参加するという大盛況ぶりだ。

参考:1600万ドルを調達したCourseraなど有名大学もオンライン講義に本腰を入れる時代に

ちなみに私のお気に入りのコースはイリノイ大学Introduction to Sustainability

地球環境の持続可能性に関するコースだ。人口問題・共有地の悲劇・気候変動・エネルギー問題・食糧問題などを扱う。ビデオが良くまとまっていて見やすい。

Coursera には、歴史や芸術といった人文系のコースもあるが、主力は理系、とくに IT 系である。簡単に誰でも登録できるので、気軽に挑戦してみてほしい。

私は、こうした英語圏との接点を通じて、日本語と遜色ないレベルの英語の読解力と文章記述力を身につけたいと目論んでいる。日本経済の未来がどん詰まりであることを思えば、これからは外国人たちとともに働いて行くしかない。そのためには、英語力がどうしても必要だからだ。

エルム・ラボで、英語を学ぶ・英語で学ぶ

最後にちょっと宣伝。

私が主催するオンライン学習コミュニティ「エルム・ラボ」。何かを学びたい人たちが集い、互いに支援し合っている。何を学んでも構わないのだが、私としてはメンバーに「英語を学び、英語で学ぶ」ことを勧めている。

特にお勧めしたいのは、英語を勉強しているが、長続きしない方だ。

私はメンバーにstudyplus で学習記録を残していただくようにしている。私は、それを必ずチェックして、「いいね!」ボタンを押したり、コメントを付ける。これが意外に効くのだ。「いつもは三日坊主だったが、今回は学習が長続きしている」という反応を頂くことが多い。誰かに見られているというプレッシャーが学習モチベーションを高めるのだ。英語の初級〜中級者のメンバーが多く、お勧めの教材や学習法も分かってきている。

一方で、メンバーには英語の上級者もいるので、英語スキルの高い方にも満足していただけるだろう。

エルム・ラボでは上の Coursera のコースを皆で受講しようなどという企画も行なっている。最近では、エルム・ラボのウェブサイトを一緒に作ろうという企画もある。私は米国公認会計士(USCPA)なので、会計を学びたい方にも向いている。

私と同じく「これから外国へ打って出よう」という方はぜひ参加してほしい。

エルム・ラボへの参加を希望される方はこちらへどうぞ