職業訓練校としてのコワーキングスペース

私は、最近、タネマキというコワーキングスペースにはまっている。いまもタネマキにいてこれを書いている。

コワーキング&シェアオフィススペース

コワーキングスペースは、簡単にいえば「パソコンさえあれば仕事ができる人たちが、電源とインターネット接続を得て、時間を気にすることなく落ち着いて作業できる、カフェとオフィスの中間的な空間」のことだ。

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タネマキは横浜駅徒歩8分にある。こじんまりとした癒し系のスペース。オーナーの上津原氏考案の公式ゆるキャラ「モグ雄」君がやさしく出迎えてくれる。壁に描かれた空の絵がクリエイティブな雰囲気を演出している。8人掛けのテーブルが2つ、4人掛けのテーブルが1つあり、電源・Wi-Fi はもちろん完備。お茶・コーヒー・スポーツドリンクなどが無料で飲み放題だ。技術書・ビジネス書・漫画なども本棚にぎっしり詰まっており、これらを読みにくるのもアリだろう。

私は、最近、タネマキを24時間利用可能なメンバーになった。私が住むギークハウス横浜から徒歩3分の至近距離にあるため、すっかり入り浸っている。そこでいろんな興味深い人たちに出会った。

ここで面白いのは、「〜部」とよばれる定期的な勉強会が夜に催されていることだ。たとえば毎週火曜日の夜には、「Wordpress 部」が開催される。特に講師がいるわけではないのだが、Wordpress を学びたい人たちが集まって、もくもく作業をし、わからないことを周囲の人に質問する、という企画だ。私も前回の Wordpress 部に参加して、部長(企画者)の方からいろいろお話を伺った。

興味深かったのは、「HTML って何ですか?」というレベルの初心者の方が、Wordpress 部の活動を通じて、メキメキと頭角を現し、いまはそれを仕事にして稼いでいるという話だった。たしかに IT 技術は自分で実際に手を動かしてモノを作らないと習得できない。しかし、漫然と授業を聞いたり、本を読むだけでは、難しい問題に出会ったとき、行き詰って先に進めなくなる。こういう「もくもく会」形式の勉強会では、となりに質問できる相手がいるから、一人で問題を抱え込まなくてすむのだ。

勉強会にかぎらずコワーキングスペースではこういう話が多い。IT 関係の仕事をしている人が多いとはいえ、不動産関係や法律関係の仕事をしている人たちもやってくる。私はほかにも、イラストレーター、ライター、プロブロガー、ラーメン店主等々多彩な職業をもつ人々に出会った。こういう多様な環境で質問を投げると、どこかから何らかの答えが返ってくる。必ずしもどんぴしゃりの答えでなくても、問題解決へ向けて新しい発想をもたらしてくれるのは素晴らしい。

こういう刺激的な環境を功を奏したのか、最近、タネマキのメンバーで IT 起業家として成功へむけて確実に前進する人たちも出始めている。フリーランスの人が仕事の方法を学び、人脈を広げる出発点としてコワーキングスペースは最適じゃないだろうか。

いままで日本人は物理的空間をコミュニティが形成される場としてとらえることが少なかったように思う。シェアハウスは単なる住居ではないし、コワーキングスペースは単なるオフィスではない。物理的な場所である以前に、そこは人と人が刺激しあい新しいものが生まれる場所であり、コミュニティなのだ。

…とはいえ、コワーキングスペースの(たぶん日本最大の)集積地・渋谷では、もっと雰囲気が殺伐としていて、コワーキングスペースでのメンバー間の交流はあまりないという噂も聞いた。明日、たまたま渋谷のスペースに行くことになっているので、そこらへんの事情についても確かめてみたい。