ベトナムの司法制度

今日はベトナムの司法制度について調べてみた。
参考にしたのは下の資料。

ヴィエトナム(ベトナム)刑事司法制度の概要及び日越比較

最高人民裁判所長・最高人民検察院

ベトナムでは、国会は国権の最高機関である。

は国会によって任免される。

首相も国会によって任免されるので、ベトナム法曹界では、最高人民裁判所長は首相と同格という意識が強いらしい。

司法省

政府の直属機関。

  • 所管事項につき法規範文書の草案作成
  • 他省庁が起草し、国会に提出する法案を審査(日本の内閣法制局の機能)
  • 国会により発布された憲法及び法律に関して、これを実行する規範文書を作成する(日本で言えば、政令か?)
  • 下級裁判所及び民事裁判執行の運営・管理

日本の法務省に比べると所管事項は少ない。

裁判官

  • 国家主席により任免
  • 終身(身分の保証がある)
  • 定年 男60歳、女55歳。

(これは公務員は全員同じ。定年後すぐに年金がもらえるため、「女性を労働の義務から早期に解放する」女性保護のための措置とのこと)

裁判所の種類と権限

1. 最高人民裁判
  • 裁判官数 約100名
  • 専門裁判所を有する(専門裁判所とは、民事・刑事・経済・労働・行政の各事件ごとに別の係属部が担当するという意味である)
  • 下級裁判所に対し、裁判における法律適用に関する指導権限を有する。
  • 省級人民裁判所・中央軍事裁判所の判決に関する覆審(=上告審)
  • 監督審(?)
  • 再審

最高人民裁判所に違憲立法審査権はない。(これは、国会の権限)

2. 省級人民裁判
  • 裁判官数 約900名
  • 各地方省(Tinh)に対応して存在する。
  • 刑事事件については、懲役7年以上・無期懲役・死刑などの重大事件についての第1審。
  • 未確定の第1審判決の覆審(=控訴審
  • 専門裁判所あり
3. 県級人民裁判
  • 各県(Huyen)に対応
  • 全国に630
  • 刑事事件については、懲役7年以下の犯罪について第1審
  • 専門裁判所なし

人民検察院

  • 独立した国家機関 => 他の機関からの不干渉。憲法と法律にのみ拘束される。
  • あらゆる団体について法律を遵守するように監督する権限
  • 統一された国家機関 => 下級機関は上級機関へ責任を負い、活動報告を行う。

感想

日本の司法制度と比較すると、

日本 ベトナム
最高裁判所 最高人民裁判
高等裁判所 対応なし
地方裁判所 省級人民裁判
簡易裁判所 県級人民裁判

という対応だろうか。ただし、日本の場合は、地方裁判所からスタートして、控訴、上告と二回判決が翻るチャンスがあるのに対して、ベトナムでは一回だけのようである。後は、軍事裁判所や軍事検察院(それぞれ、中央・省級・県級の3級に分かれている)があるのが、日本とは異なる点か。しかし、軍事裁判所や軍事検察院は、最終的には、最高人民裁判所や最高人民検察院へ責任を負っている、という点で、軍事部門の優越は見られない。

というわけで、ベトナムの司法制度は、それほど極端に日本の制度と変わらないという印象を受けた。もちろん、専門家に言わせれば大違いなのかもしれないが。