残念な日本のWeb

梅田望夫氏が日本のWebに失望を深めているようだ。

日本のWebは「残念」 梅田望夫さんに聞く(前編)

英語圏のウェブが、自分の人生を高める道具となり得ているの対して、日本のウェブはサブカルチャーニコニコ動画など)以外ではあまり見るべきものがない。SNSアメリカでは人間関係を開拓し、仕事さえそこから見つけていく生活のインフラになっているのに、日本では単なる遊び道具の粋を脱していない。「英語圏のネット空間と日本語圏のネット空間がずいぶん違う物になっちゃったな」と遠い目をする梅田望夫氏。

確かに、日本では結局ウェブサービスが社会をいまのところ大きく変えているとはいえないかもしれない。現実に日本社会を支配しているのは、相変わらず、官僚と大企業を頂点とする産業ヒエラルキー構造である。ウェブは個々人の能力を解放するためというより、そうした旧来の構造を部分的に補完するのに、細々と使われているのみであろう。(たとえば、就職活動の情報収集や意見交換、応募等)

私は現在のところ英語圏のWebで日常的に接するのは BBC News のみである。この BBC News、全世界の隅々までのニュースをとりあげる網羅性、分析記事の豊富さ、世界中の読者の声を生で捉える読書欄など、日本のメディアと比較するのが無意味なくらいに、圧倒的に優れている。英語圏でも、教養のない人たちは、 BBC News など読まないだろうが、教養のある人たちに限って言えば、英語圏と日本語圏では圧倒的な情報量の差があると言わざるを得ない。

中国語圏ではこんな動きもある。

ネットが生み出す「中国式民主主義」

中国の国会に当たるものに全国人民代表大会というものがあるのだが、そこで話し合う議題をインターネットで直接募集しているらしい。いくつかカテゴリが用意されており、「網民自身が最も興味のある項目をクリックすると、さらに詳細な情報が提供されていて、それをさらにクリックして自分の意見を表明し、日本の国会に当たる両会に届けるというシステム」である。

中国は、自由な選挙を通じて、国会議員を選ぶという民主主義の国ではない。では北朝鮮のような独裁国家かというとそういうわけでもない。官僚たちはそれなりに国民の福祉を考えて真摯に政策を検討している。だが、国会議員を通じて国民の声を知る、という本来の議会制民主主義の機能が働かないために、従来は国民の声が官僚に届きずらかった。

中国において、インターネットを通じて官僚が国民の意見を直接聞く仕組みは、国民だけでなく、官僚もまた強く求めていたものかもしれない。国民の考えていることがわからなければ、国民の抵抗の少ない形で政策を実施することが難しいからだ。

インターネットは中国社会の形を変えつつあるのかもしれない。言論統制のある国であるからこそ、インターネットはヨリ重要なのではないか。しかし、日本のWebにはそういう切実さもない。

かつて私はカナダで英語だけで生活していた。小泉改革に希望を感じて日本に戻ってきたものの、結局は元の木阿弥になった。ベトナムへ脱出して半年になるが、やはり日本を出たのは自分にとっては正解だった。「残念な日本のWeb」から距離を置き、英語圏のWebで過ごす時間を増やすべきときなのかもしれない。