ベトナム系カナダ人の大学教授

今日は、ベトナム系カナダ人の大学教授と昼食をともにした。

私のカナダ時代の友人のお父さんで、現在はモントリオールのコンコーディア大学で物理学を教えている。ベトナムの大学との共同プロジェクトのために、3ヶ月ほどベトナムに滞在するそうだ。日本の大学で教えていたこともあり、何かと日本には縁が深い人物だ。その温厚な人柄と鋭い知性に、深く感銘させられた。

長いベトナム戦争の時代に青春の日々を送った。暗黒の日々であったそうだ。教授は南ベトナムサイゴン出身で、留学生としてカナダで物理学を学んでいたが、ベトナム戦争終結により、南ベトナムが「解放(=共産化)」され、ベトナムに戻るに戻れなくなったと聞いている。

いまは、ベトナムが世界の国々に門戸を開き、失われた時を取り戻そうと、急速な経済成長を遂げている。教授の表情は明るかった。ベトナムには大きな可能性があり、そう考えるもっとも大きな理由は教育熱心な国民性だという。カナダは、ベトナムに対してさまざな援助が出来るはずだと教授は情熱的に語った。ベトナム系カナダ人として、ベトナムへの知的な援助を自分の使命と考えているように見えた。

教授と同年輩のベトナム人たちは戦争の時代を生き、一人一人がつらい個人史を持っている。そのことを想像すると目頭が熱くなった。

教授は、ベトナム人従業員には敬意を持って接しなさい、と助言をくれた。給料が少々安くても、敬意を持って大切に扱えば、ベトナム人は一生懸命働く。逆に、人格を軽んじれば、必ず去っていくと。「ベトナム人は安定を好むのです」と教授はやさしい表情で言った。従業員は、大切に扱われていれば、同じ会社で長く働こうとするそうだ。こういうところは、日本人に良く似ているといえるかもしれない。