小さな司法部事務所

私の友人になぜかベトナムの高級官僚がいる。彼女は、司法部(日本の法務省)のベトナムの南部代表事務所の所長さんである。つまり、サイゴンの人にとっては、法務大臣にも等しいわけで、相当偉い人に違いないのだが、本人はまったく偉ぶらずとても気さくな人物である。その司法部事務所を昨日訪れた。訪れたといっても入り口まで行っただけなのだが。

驚いたのは、その建物の小ささである。場所は、カフェなどが密集する繁華街からわずかに裏路地に入った住宅地にあり、実際、この事務所もそういう住宅の一つを借りて、設置されているようなのだ。小さな入り口の上に、確かに「司法部事務所(Bo Tu Phap Van Phong)」とプレートが張られており、その上に、赤字に黄色星のベトナム国旗がはためいている。事務員が鍵を外して入り口を開けると、いきなり子犬が飛び出してきてびっくりした。なぜ法務省の事務所に子犬??さすがベトナムである。

1975年に北ベトナム南ベトナムを打ち負かす形で、ベトナム戦争終結した。このとき、初めて共産主義サイゴンの街に入ってきた。資本主義の権化のようなこの街にとっては、大変な騒ぎであっただろう。単にカネが足りないだけかもしれないが、いまだに中央官庁がまったくオフィスビルらしくない場所に間借りをしている姿は、「進駐軍」としての北ベトナムをなんだか象徴しているのような気がした。偶然か否か、所長さんもハノイ出身の人である。