資本主義の聖堂 HSBC 香港本店

資本主義の大聖堂

世界最大の金融グループ HSBCHSBC持ち株会社 HSBC ホールディングスは、英国に本社を持つが、その中で最大の子会社 HSBC 香港は、純粋な香港企業である。そのため、アメリカに端を発する今回の金融危機でも大きな損失は受けなかったらしい。

香港島セントラルに HSBC 香港本店はある。今日、私は、ここに銀行口座を開設するために訪れた。

セントラルは、ニューヨークで言えばウォール街に相当する金融機関の集積地である。その中でも、HSBC 本店はひときわ目立つ強大な建物である。私は、その姿に畏怖さえ感じた。それはむしろ資本主義という宗教を司る壮大な聖堂のように思えた。

長いエスカレータを上がっていくと、そこは数十階上まで吹き抜けの空間になっている。その美しさと規模の大きさに私は度肝を抜かれた。口座開設手続きは至って簡単だった。パスポートと運転免許証(私は国際免許証を提示したが、実は普通の日本の免許証でもよいらしい)を受付で提示すると、番号札を渡された。10分後私は、その広大な吹き抜けの空間の一番下に無数に存在するブースの一つに案内された。

スーツを粋に着こなした若い香港人男性職員とコンピュータを挟んで腰を掛けた。私は、簡単な申し込み用紙を記入して、いくつかの質問に答えると、彼はひとしきりパソコンのキーを叩いた後、「口座番号を取りに行きますから」と中座した。3分後、彼は封印されたオレンジ色の封筒を片手に再び現れた。実は口座開設キットだった。この中にキャッシュカード、暗証番号の書かれた紙、それと口座に関する説明書が入っている。暗証番号はシールの後ろに隠れており、それをはがして確認する形になっている。そのためキャッシュカードには自分の名前は入らないが、考えてみればそっちのほうが安全かもしれない。

私は、ブースの男性の案内で、通常の出入金の窓口を訪れた。忙しく働く職員たちの背後には巨大な窓ガラスがあり、それを通して、山の斜面の濃い緑色の木々と、それに埋もれるように点在する西洋風の古い階段や建物が見えた。その美しさには一瞬はっと息を飲んだ。私は、現金を入金し、そして ATM ですぐに暗証番号を変更した。

すべての手続きに要した時間、わずか20分程度。それでキャッシュカードまで入手できた。あとはウェブサイトでインターネットバンキングの手続きをすれば終わりだ。その効率的な手続きには舌を巻いた。さすがは天下の HSBC である。邦銀など足元にも及ばない、と思った。

日本の財政破綻

あまり人々の不安をあおりたくはないのだが、財政規律が失われつつある日本政府の現状を鑑みるに、近い将来の財政破綻について、私はかなり深刻な懸念を感じている。詳しい説明は省略するが、おそらく日本の財政破綻は、ハイパーインフレを引き起こすだろう。ハイパーインフレが発生した場合、預金を引き出して現物(不動産など)に変えようという動きが発生する可能性がある。そのため、インフレの亢進を防ぎ、銀行の経営破綻を防止するため、日本政府は預金を封鎖する可能性がある。これに対抗するためには、日本の金融当局が統制できない外国に預金を外貨で持つ必要があるのだ。

香港は、自由経済の牙城でありつづけたし、これからもそうであろう。(少なくとも2047年に中国本土と完全に一体化するまでは)今日、私はこのHSBC 本社という資本主義の聖堂を見て、日本政府より、HSBCのほうがまだ信用できるという思いを強くした。

英語の重要さ

今朝、

文部省は日本人の英語不能化政策の解除をしてみてはどうだろうか? - 金融日記

というエントリがネットで話題に上っていた。筆者は、次のように主張する。日本人が英語ができない。英語圏で流通する膨大な情報にアクセスできず、また英語で自身を表現もできないために、日本に縛られる結果になっている。国民を意のままに統制したい日本政府の思う壺である、と。

もちろん、私は日本政府がわざと日本人の英語を下手なままにとどめているとは思わない。だが、今日私が実感したのは、もし私が英語を話せなかったら、香港で銀行口座を開設するのはずっと困難だっただろうということだ。欧米人は、資金や自分自身が自国から出て行くことで、自国政府への反抗の意思表示ができる。それは彼らが英語ができるからであり、世界へ出て行く障壁が低いからだ。英語の下手な日本人はそれができないために、日本政府のいいなりになるしかない。

出て行くことのできないメンバーの足元を見て、やりたい放題の暴虐を働く。これって考えてみるとブラック会社の典型だよね。実は、日本ってブラック国家なのかもしれないね。