対話的リーダーシップ
先日書いた日本的経営が社畜を生んだ理由というエントリは、反響が大きかった。そこで紹介したのが、
- 作者: 河谷隆司
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2003/11
- メディア: 単行本
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である。アジアの日系企業では、「日本人ボス」と「アジアのマネージャー」の会話はかみ合わない。では「日本人ボス」はどうすればいいのか。この本の中で著者が解決策として提案する「対話的リーダーシップ」について紹介する。
対話的リーダーシップとは、文化が異なる人々の間で、深いレベルのコミュニケーションを達成するための一手法である。これは次の5つのステップから成り立つ。
- 意味を伝える
- 成功へ導く
- 場を共有する
- 相手を尊重する
- 自分との違いを受け入れる
「日本人ボス」が「アジアのマネージャー」に、何かをしてほしいと考えるとき、まずそのアジア人のすべきタスクの「意味を伝える」。次にボスはそのタスクが完遂できるように「成功へ導く」。成功へ導くプロセスで、コミュニケーションが密に行えるように「場を共有する」。アジア人は日本人とは異なる背景を抱えている。そういう「相手を尊重する」。そして最後に、アジア人が日本人と違うやり方をしたとしても「自分との違いを受け入れる」
一つ一つをもうちょっと詳しく見てみよう。本書の表現を借りて、各ステップの具体的方法を箇条書きにしてみる。
1.意味を伝える
- 英語をマスターして、真剣にコミュニケーションする
- 業務効率向上のためのフィードバックをする
- 業務の期待値・目的・戦略目標を明示する
- 企業価値、企業文化を浸透させる
2.成功へ導く
- 意思決定過程へ参画させる
- 部下の仕事を支援する
- 率先垂範する
- 自己啓発機会を増やす
3.場を共有する
- 問題解決や相談の場を共有する
- 困難な挑戦、成功・失敗体験を話し合う
- 情報を共有する
- 対話を増やす
4.相手を尊重する
- ローカルウェイを尊重する
- 部下の状況と感情を把握しておく
- 仕事以外の義務を理解する
- 部下を信頼する
5.自分との違いを受け入れる
- 問題発生時に人・民族を責めない
- オープンマインドであること
- 部下の提案を取り入れる
- 感情をコントロールする
こうやってみると、対話的リーダーシップというのは、日本人ボスとアジアのマネージャだけの関係にとどまらず、任意の文化を持つ上司と部下の関係に応用できるのではないか。日本の中で、この対話的リーダーシップを実践しているボスは、あらゆる文化を背景に持つ人たちともとうまくやっていける可能性があるだろう。グローバル化に直面する日本的経営にとって大きなヒントとなるだろう。