バイクが盗まれそうになった

サイゴンにあるレストランに夕食を食べにいった。1時間ほどゆっくりして、レストランを出た。バイクにまたがり、エンジンを掛けようとする。あれ?キーが入らない?何度やってもダメ。ベトナム人の店員さんに見てもらうと「あーこれは誰かが盗もうとしたね」といわれてびっくり。明かりで照らしてみると、確かに鍵穴が半分壊されている。

やがて、ベトナム人たちがいろんなところかワラワラと寄ってきて、ああこうだと議論を始めた。怪訝な顔で鍵穴を覗き込む者。顔を赤くしてなにやらまくし立てる者。おそらく「こんなところ置いちゃだめだ。危ないんだから」とか言っているのだろう。みんな心配してくれているのだ。ベトナム人はなんて優しいのだろう。もしここが東京であったら、たぶん誰も見向きもしないだろうに。

結局、修理の人が来てくれて、応急措置をしてバイクが一応動くようになった。後で鍵穴自体を交換しなければならないようだ。やれやれ。

私は昔、日本で2回バイクを盗まれた。バイクというのは、どうしても盗まれる運命にある。だから盗まれそうになったこと自体に驚きはしないが、それより驚いたのはベトナム人たちの反応だ。ここには人間の自然な人情がまだ残っている。もう東京の人間が失ってしまったものを。