産業連関表の基本
定義
産業連関表は、産業ごとの生産・販売等の取引額を行列形式にした指標。...
財・サービスといった産業ごとの生産構造(どの産業からどれだけ原料等を入手し、賃金等を払っているか)、販売構造(どの産業に向けて製品を販売しているか)をみることができ、経済構造の把握、生産波及効果の計算などに利用される。
資料
総務省の統計局のサイトに産業連関表に関する詳しい説明がある。まずはこれを読んでね・・・。
開放型の逆行列係数の求め方については、
逆行列係数表| 相模原市産業連関表|各種データ | さがみはら都市みらい研究所
によい解説がある。
産業連関表の意味
産業連関表は、
- 産業間の投入・被投入の関係をそのまま表現したもの(取引基本表)
- 取引基本表を生産額で正規化したもの(投入係数表)
- 生産額を最終需要の関数で表現したもの(逆行列係数表)
などがあるが、とりあえず、今回は GDP を理解するために取引基本表だけを考える。
農家とジュース屋の産業連関表(取引基本表)を考える
前回「GDP とは何か」の例について考える。
ある村に農家とジュース屋さんだけが存在するとする。農家はリンゴを作り、ジュース屋さんは、このリンゴ農家からリンゴを買って、ジュースを作って売る。リンゴ農家が使う肥料とか、ジュース屋さんのミキサーの電気代とか、とりあえず無視。これはあくまでも概念を理解するための例であるので。
この村で、ある年の初めには、リンゴが1個もなかったとする。リンゴ農家は3個のリンゴを作って1個100円で売る。ジュース屋さんは、この3個のリンゴを農家から買う。そして、1杯のリンゴジュースを300円で農家に売り、1個のリンゴを自分で食べ、残りの1個は、来年のために取っておくとしよう。
この場合の産業連関表はどうなるだろうか。答えは次の通り。
需要部門(→) | 中間需要 | 最終需要 | 生産額 | ||
---|---|---|---|---|---|
供給部門(↓) | 農家 | ジュース屋 | 最終消費 | 在庫投資 | |
農家 | 100 | 100 | 100 | 300 | |
ジュース屋 | 300 | 300 | |||
粗付加価値 | 300 | 200 | |||
生産額 | 300 | 300 |
この表から次のことが読み取れる
- GDP(生産面)
- 農業に関する列を見る。すると、生産額が300円。中間投入はゼロなので、これがそのまま生産された付加価値になる。
- ジュース屋に関する列を見る。生産額は300円。しかし農業からの中間投入が100円ある。そのため生産された付加価値は200円になる。
- GDP(生産面) = 300円 + 200円 = 500円
- GDP(支出面)
- 農業に関する行を見る。すると、最終消費は100円。在庫投資は100円。
- ジュース屋に関する行を見る。最終消費は300円。
- GDP(支出面) = 農業の生産物への最終消費100円 + 農業の生産物への在庫投資100円 + ジュース屋の生産物への最終消費300円 = 500円。
- GDP(分配面)
- 農業に関する列を見る。粗付加価値は300円。つまり農家は新たに300円分の付加価値を手に入れた。
- ジュース屋に関する列を見る。粗付加価値は200円。ジュース屋は新たに200円分の付加価値を手に入れた。
- GDP(分配面) = 300円 + 200円 = 500円
というわけで、GDP(生産面) = GDP(支出面) = GDP(分配面) の三面等価が成立する。
特に GDP(生産面) = GDP(分配面) に関しては、「取引基本表を縦に読んでるだけで、同じことじゃん!」と気づかれた方は鋭い!実際、同じことだ。現実の産業連関表においては、この粗付加価値の項目が資本と労働に分割されていて、資本の取り分はいくら、労働者の取り分はいくら、と書いてあるのでもっと面白い。
日本の GDP の推定にも産業連関表が使われている。産業連関表は行列なんでいろいろ数学的にいじくることができて、数学好きの人には面白いオモチャになるだろう。そこから出てくる数字については、慎重な取り扱いが必要になってくるが。
とりあえずこれで、産業連関表の基本に関する解説終了。やはり、総務省の統計局の解説が(ややテクニカルだが)非常によいので、真面目に勉強したい人はこれを読もう!