日本が中国より貧しくなる日
今年あたり、中国の GDP が日本の GDP を追い抜くといわれている。「いや、一人当たりGDPじゃ日本のほうがずっと大きいから、そんなの問題じゃないよ」とか言っているあなたに、簡単な算数の問題。
20年後の一人あたり GDP を日中で比較してみよう。
中国の人口を日本の約10倍だと考えよう。いま日本と中国のGDPがほぼ同じだから、中国の一人あたりGDPは日本のそれの10分の1ということになる。中国は人民元、日本は円を使っているから、当然比較するときは、為替レートを使って、他の通貨(普通は米ドル)に変換して見ることになる。では為替レートはどうなるだろうか?
いまの中国は高度成長期の1970年ころの日本によく似ている。日本は1970年代はじめに変動相場制に移行して、1990年代はじめの20年間で、円の価値は米ドルに対して3倍あがった。中国でも同様のことが起こる可能性が高い。20年後、人民元の価値も米ドルに対して3倍になるとかんがえよう。
日本経済はこれから衰退していく。衰退する国がもつ通貨は、安くなっていくのが普通である。20年後、円の価値がいまの半分くらいになっていたとしても不思議じゃない。
中国と日本の GDP 成長率の差はいまは10パーセント近くあるが、ちょっと保守的に見積もって、これから20年間、平均 3.5 パーセント差が続くと考えよう。70 というマジックナンバーで成長率を割ると、2倍になるまでの期間が計算できる。70 ÷ 3.5 = 20 年で、(為替レートが変わらないと仮定した場合の)中国の GDP は、日本の GDP の2倍になる。
総合するとどうなるか?日本の一人当たり GDP (米ドル建て) を 1 とすると、
20年後の中国の一人当たり GDP = 1/10(現在の中国の一人当たりGDP) ×3(人民元上昇効果) x 2(日本円下落効果) x 2(中国のGDP成長) = 1.2
つまり、20年後の中国の一人当たり GDP は、日本の 1.2 倍に達するのである。
深セン・上海・北京など沿岸地域の豊かな都市市民の一人当たり GDP は中国平均よりずっと高い。これらの人々だけ勘定しても1億人近い。かれらの一人当たり GDP が日本の2倍を越えても、まったく不思議ではない。
これから10年間のうちに人民元の大幅な上昇による、中国の購買力の爆発が起こるだろう。バブル時代の日本を想像すればいい。金余りの中国企業が、現金ばかり抱え込んで経営がぱっとしない、日本企業を買いあさるだろう。いま大学生の君たちは、20年後、中国人の上司につかえている可能性が高い。中国企業の上層部は、アメリカで学位を取った人たちが多いし、そもそも中国人の大卒は日本人よりずっと英語が堪能だから、日本の子会社で使う言語は英語になるだろう。だが、中国人上司たちと個人的に仲良くするのに、中国語ができて悪いことは少しもないだろう。
いまの日本の大学が、こういうシナリオに備えて、学生たちを教育しているだろうか?そうだというなら、もうすでに授業の半分くらいは英語で教えていてもおかしくないんじゃないだろうか?もし日本語でいいというなら、どうやって日本語だけで生き残るか、学生たちにその戦略を提示しているだろうか?否、そんなことはない。なぜなら、日本の大学は何も考えていないからだ。(うちの大学はこんなにがんばってるよー、という話があれば教えてね)