「英語特区」で済州島は「韓国のシンガポール」になるか?
今朝 @TrinityNYC 女史のツィート経由で知ったこのニュース。その強烈さに思わず目が覚めた。
Western Schools Sprout in South Korea - NYTimes.com
済州島に欧米の有名校を集めて広大な「英語特区」を作ろうという試み。現在、多くの韓国人が巨大な犠牲を払って子息を海外で勉強させている。「海外に行かずとも本格的に英語と欧米風の教育が受けられ、費用を節約し、家族の紐帯を維持できる」というのが売りらしい。
ここでは、教師や学生、行政や医師、事務員さえも英語だけで話すことになるという。これは単なる計画段階ではなく、今月、実際に、英国の学校が1校開校するらしい。
私がカナダに語学留学した 1999 年には、すでに英語を学ぼうと必死な韓国人たちがたくさんいた。韓国人の気持ちはよくわかる。彼らにとって、英語力は就職に直結するので、実に切実な問題なのだ。上の記事によると、ソウルのインターナショナルスクールには韓国人が殺到して、入学を断らなければならない例が多数に上っているという。韓国では「英語による教育」に対する巨大な需要があるから、上の済州島の「英語特区」が成功する可能性は高い。
済州島の人口は約55万人、面積は1,845kmで東京都をやや小さくした程度である。済州訛りの韓国語は、本土の人間には理解できないことで有名で、ちょうど琉球語のようなものらしい。独自の文化を持っていると思われる。南部は温暖で「韓国のハワイ」と称される。(済州島 - Wikipedia)
済州島に巨大な英語教育特区を作り、その後、それを拡大してシンガポール型の経済特区にする。韓国政府はそんな青写真を描いているのかもしれない。済州島は、歴史的に低開発地域であるから、韓国政府としては、済州開発の起爆剤として考えている可能性があるのではないか。
済州島の面積 1,845km に対して、香港 1,104km2, シンガポール 707.1km2。ただし済州島の中心部は山岳地帯であるので、居住適地は少なめか。(まあ香港も半分山の中にあるようなものだが・・・)それでも、人口500万人くらい住む経済特区は十分建設可能だろう。
もし済州島が「シンガポール」になり、そこに多国籍企業が殺到するような状況になるなら、私もそこで働いてみてもいいかもしれない。日本には近いし、なかなか素敵な話だ。
・・・などと妄想していたら、実際すでに済州島は「特別自治道」として、経済特区のような地位を確立しているらしい。病院の株式会社化など、自治体と中央が協力して、迅速な政策の立案と実行に努めているようだ。
「東洋のハワイ」済州島はこうしてできた:日経ビジネスオンライン
いまの韓国なら、 済州島を「シンガポール」にする、なんていう過激な政策だって本当に実行しかねない勢いと怖さがある。一方で、日本政府にはおそらく何もできまい。延々と議論が続くだけだろう。・・・財政が破綻するその日まで。
歴史というのは皮肉なものだ。19世紀後半、帝国主義という当時の「グローバル化」に対応したのは、アジアでは日本が一番早かった。あれから150年。日本はグローバル化への対応が最も遅れた国になった。
日本のことはもうあまり言いたくないけど、すでに2周くらい周回遅れという感じだ。2周というのは、まず1周遅れている上に、遅れていることさえ気がつかないのだから、すでに2周というわけだ。
日本が立ち遅れている最大の原因は、皮肉なことに、過去の巨大な蓄積があり、それを取り崩すことでいまは何とかしのげているからだ。もし、日本政府にそれほど信認がなければ、財政はずっと前に破綻していただろう。そこで、日本人は本当の危機意識を持つことができただろう。
1代目が巨大な財産を築き上げ、2代目・3代目がそれを食いつぶす。よくある話だ。最初の財産が大きいほど、子孫の誤った行動が修正されるまでのタイムラグは長くなる。この資本主義社会では、キャッシュが続くかぎり、周囲から行動修正の深刻な圧力を受けることはないからだ。
過去の巨大な成功が、日本人の一人一人の肩に重くのしかかり、膨大な人的資源の浪費につながっている。日本人は忙しく働いているふりをしているが、その実、そこから何も学んでいない。この巨大な時間の空費は、将来取り返しのつかない災禍となって、この国を襲うだろう。
日本人は、もう日本政府に何も期待するべきではないと思う。この政府はどうにもならない。過去20年間、グダグダを続けてきて、いまさら素晴らしいものに突然変身するわけがない。日本人の個人一人一人が、このグローバル化の現実に直面し、政府の助けを期待することなく、あるいは政府の妨害に屈することなく、自分の道を切り開いていくしかない。外国に出るというのが一つの答えかもしれないし、日本にとどまりつつ、外国と連携するというのも一つの方法かもしれない。道を切り開くのは独立自尊の精神を持って行動する私たち自身なのだ。
(以上の文章は、私のTwitter上のつぶやきから再構成しました)