英語上達の秘訣は発音練習にある

Lilac さんの英語教育に関する問題提起が論議を呼んでいる。

日本の中高の英語教育がマイナスにしかならない件について - My Life in MIT Sloan

どちらが原因か結果かわからないが、日本が内向きであることと日本人の英語力の乏しさは強い相関関係があるに違いない。内向きな人たちであっても、英語が上達すれば、外の情報が自然に耳に入ってくるから、だいぶ考え方が変わるかもしれない。

今日は、英語の発音を上達させる方法について話したい。

私は英語をきれいに発音することは非常に重要だと思っている。なぜなら、発音が上手くならないと、相手が何を言っているのか聞き取れないからだ。ヒトは言語音を耳にすると、自分で発音するとどうなるか脳内で仮想的に口の器官を動かし、そのシュミレーション結果を使って、その言語音を認識するらしい(認知と行動の密接な関係については、このエントリが参考になる)。

理屈はともかく、私自身は、発音をきれいにすることで、急に言語音がクリアに聞こえるようになった経験をしている。同様の経験をしている人は多いだろう。リスニングが上達すると、英語での会話が楽になるだけでなく、語彙を増やすのにも有利である。なぜなら、1つの単語を覚えるとき、綴りという視覚的情報だけでなく、音声としても定着するので、記憶に残りやすくなるからだ。

発音の練習は、勉強というより、スポーツの基礎訓練にちかい。別に頭のよしあしは関係ないのだ。ただ、正しい習慣を身に着けるまで愚直にやらないければならないのがつらいだけだ。やる気があれば誰にでもできることだろう。

UDA式30音

まずは、いまや古典ともいえる UDA式30音。

これだけで聞ける・話せる UDA式30音でマスターする英会話

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ウェブサイト: 英語発音UDA式30音でマスターする英会話

日本人が間違えやすい30の英語の発音を徹底的に鍛えることで、ネイティブスピーカーに通じる英語を目指す。UDA式30音をマスターしても、ネイティブスピーカーの発音に比べれば、正確さは 80% くらいかもしれない。日本語訛りは残る。それでもネイティブスピーカーにとってはほぼ違和感のない発音になる。日本人としてはその程度で十分だろう。

日本人は特にあごを大きく下げて作る明るい母音(all, top 等) がぜんぜんダメなのだ、という指摘は新鮮だった。

完全版 英語リスニング科学的上達法

XP対応 英語リスニング科学的上達法―語上達への第一歩 CD-ROM付 (ブルーバックス)

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これは直接、発音矯正をするものではないが、発音に対して敏感になるには最適な英語リスニング教材。ATR人間情報通信研究所というまじめなところが作っている。紛らわしい音のペアを提示して、他にヒントを出さずにどちらなのか答えさせる。たとえば、悪名高い L/R の音のペアである。これをはじめてやると、自分の耳の悪さに相当へこむのは請け合い。それでもトレーニングを積むと徐々に聞き取れるようになっていく。

昔はリスニング教材しかなかったが今は、「英語スピ-キング科学的上達法 」なんていうのもあるらしい。私はやったことがないから保証できないけど、試してみてもいいかも。

ハミングバード発音矯正メソッド

ハミングバードと呼ばれる発音矯正メソッド。それを実践する学校が全国にちらほらある。私は、東京・代々木にある「ハミング発音スクール」に通ったことがある。これは生半可な英語学校ではない。なにせ発音矯正専門の学校である。ここの先生たちは、みな日本人でもともと英語には苦労した方が多いらしいが、ネイティブスピーカー並に発音がうまい。あれは本当に驚きだった。英語は、そもそも日本語とぜんぜん発声方法が違うことを教えてくれる。唯一残念なのは、授業料がかなり高いこと。それでも、たとえばこれから留学や海外赴任を予定していて、本気で英語と向き合わなければならない人たちは、試してみる価値が十分あると思う。

まとめ

すでに成人してしまった日本人がネイティブスピーカー並の発音を身につけるのは、不可能でないにしろ、非常に難しい。それでも、「英語の発音のツボ」をきちんと押さえるだけで、ネイティブスピーカーにとってはたいへん聞き取りやすくなる。とりあえず日本人の大人たちはこのレベルを目指そう。

10 歳以下の子供たちは、比較的容易にきれいな英語の発音を身につけさせることができるかもしれない。この子供たちが最初に接する英語教師はネイティブスピーカーでなければならない。もし、本気で日本人の英語力を底上げしたいと願うなら、20 校に 1 校、英語で教える「英語小学校」を作る ことを提案したい。ここではまずは、外国人のネイティブスピーカーが全教科を英語で教える。そしてそこで育った子供たちが、今度は教師となり、外国人に代わって子供たちに英語で教科を教えるようになるのだ。

自分の英語はダメだとあきらめるのは早い。頭のよしあしは関係ないから、訓練をつめば、だれでも発音はきれいになる。そうすると自分の英語に自信がつき、勉強が楽しくなる。こうやって英語力がどんどん向上していく。日本人の英語はもっとうまくなる