書評「20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ」

20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ

20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ

副題に「20世紀の半分以下の時間と費用で学ぶ 最新最短英語学習法」とある。ずいぶん前に、著者のHiroyuki Hal Shibata (@HAL_J) さんに献本いただいたのだが、いろんなことにかまけて書評を怠ってきた。献本されたからといって手加減せず厳しく批評していきたい(ということで@HAL_Jさんよろしく)。

といいつつ、実はあまり厳しく批評する対象がない。全体的に私にとっては非常に常識的な作りであり、おかしなところは一つもない。カナダで苦労して英語を習得した私の経験にほぼ一致する。HAL_J さんが自分の経験に基づいて誠実に書いた本だということがよくわかる。

前半は、教材とインターネットを利用した独学の英語学習について。後半は英語学校やランゲージエクスチェンジのような対人的な英語学習について述べている。圧巻は、前半で提示された教材の多彩さである。これらを一つ一つ全部こなしていって、かつ英語がまだ上達しないというのは考えられない。この中でもいくつか気に入ったものがあるので、以下に紹介してみる。

どんどん話すための瞬間英作文トレーニング (CD BOOK)

どんどん話すための瞬間英作文トレーニング (CD BOOK)

実はまだこの本を買ってはいないのだが、極めて単純な短い文章をどんどん英訳していくという練習は、英語を話すときのよい練習になる。日本の英語教育は、インプット中心で、アウトプットの練習をしない。ところがこの二つは頭の中で使う部位がぜんぜん違うのだ。アウトプットの能力はアウトプットの練習を通じてしか向上しない。アイルランドにはじめて語学留学に行き、ホームステイしたとき、「その塩をください」という言葉が言えなくて悔しい思いをした。なんていうことはない "Pass that salt to me" と言えばいいだけのことだったのだが。この瞬間英作文を学べば、いざ英語を話す時、こういう何気ないフレーズが口をついて出るようになるだろう。

aとtheの底力 -- 冠詞で見えるネイティブスピーカーの世界

aとtheの底力 -- 冠詞で見えるネイティブスピーカーの世界

英作文で一番難しい文法は何だろうか?仮定法過去完了? No, no, no. 一番難しいのは冠詞である。私は、他人の英語能力を判断するとき、まずそこを見る。冠詞(そして関連する名詞の可算不可算の概念)をきちんと使いこなしている人をみると、「おお〜やるな!」と感じる。この「a と the の底力」は、そもそも不定冠詞 a とはなにか、定冠詞 the とはなにか、というところからはじめて、これらの語のもつ基本的なイメージを読者に理解させることを主眼にしている。冠詞の使われ方は非常に多彩で、網羅的に列挙すると何の関連もないように見えて、実は掘り下げて見ると、すべて互いにつながりあっているということがわかるだろう。契約書や法律といった意味が明確に定義されるべき文章でも、冠詞は重要な役割を果たしているので、ビジネス英語を鍛えたい人は本書を一読してみるべきだろう。

How to Stop Worrying and Start Living

How to Stop Worrying and Start Living

上はアマゾンのリンクだが、audio book といえばダウンロードしてすぐ聴ける audible.com いいですよ。@HAL_J さんおすすめのD・カーネギー「道は開ける」(How to stop Worring And Start Living)を購入して聴いてみた。低い男性の声が渋いです。いい文章を繰り返し聞くことによって、潜在意識によいメッセージが植え付けられ、前向きになれそうだ。

他にも、無料語学学習サイト Lang-8 もおすすめ。

というわけで、英語を本気でマスターしたいと考えている人たちには、超おすすめの一冊である。

唯一ケチをつけるとしたら、この本は多くの素晴らしい参考文献を載せているので、アマゾンのアフィリエイトのリンクを用意しておけばさらによかったのにな、と思った。正直、上の「a と the の底力」を買う時、@HAL_J さんに紹介料を寄贈したかった。変な誤解を受けたくなかったからそうしなかったのかな。

P.S.

実はこの本の中に、私が書いた文章への引用がある。かなり恥ずかしいw だからほめてるんじゃないんだからねw